総額約24.6兆円に膨らんだAI分野のM&A市場、49%が「ミドルマーケット」案件
彼らの創業のタイミングは絶妙だった。PitchBookのデータによると、2025年のAI分野のM&A件数は1600件を超え、開示ベースの総額は1550億ドル(約24.6兆円)に達し、過去最高を記録した。また、2025年は、グーグルによるWizの320億ドル(約5.1兆円)での買収や、メタによるScale AIの148億ドル(約2.4兆円)での買収といった超大型案件が話題をさらった。しかし、Axomにとってより重要だったのは、M&Aの中心が依然として同社の主戦場である1億ドル〜10億ドル(約160億円〜約1590億円)規模の案件にあったことだ。
PitchBookによると、2025年のAI分野のM&A総額の49%を占めたこの「ミドルマーケット」の規模は、約770億ドル(約12.2兆円)に上った。
創業から2年足らずで、OpenAIやエヌビディアへの売却など16件を手がける
Axomは2024年6月、最初の案件となった分析ソフトウエア企業Rockset(ロックセット)のOpenAIへの売却を成立させた。その後も同社は、OctoAI(オクトAI)のエヌビディアへの約2億ドル(約320億円)での売却や、Voyage AI(ボヤージュAI)のMongoDB(モンゴDB)への2億2000万ドル(約350億円)での売却、Eppo(エッポ)のDatadog(データドッグ)への2億2000万ドル(約350億円)での売却、Superhuman(スーパーヒューマン)のGrammarly(グラマリー)への売却、Neptune.ai(ネプチューンAI)のOpenAIへの4億ドル(約640億円)での売却などを助言してきた。
創業から2年足らずで、総額50億ドル超(約8000億円)の16件の案件を手がけたAxomは、今後も政府の監視を受けにくい小規模案件が相次ぐと見ており、その波にうまく乗れる位置にいる。
人材獲得が主目的の「アクハイヤー」型買収が広がる中、VCの利害とどう折り合いをつけるか
この4カ月の間に、メタ、OpenAI、Anthropic(アンソロピック)は合わせて10件超のAIスタートアップ買収を成立させた。その多くは、事業そのものより人材の獲得を主目的とする「アクハイヤー」と見なされている。ブレッサーズは「M&Aは、あらゆるテック企業がスピードを上げるために使おうとしている手段の1つだ」と語る。その上で、「買い手は、いまは割高に見える案件であってもプレミアムを払うことをいとわない。AI競争の勝者になれるかどうかに賭けているからだ」と話す。
こうした状況は、優秀な創業者たちにこれまで以上の交渉力を与えている。同時に、創業チームだけが巨大企業に法外ともいえる金額で引き抜かれ、スタートアップには抜け殻だけが残るような、異例の買収も生んでいる。
ハイタワーは「最近の買収案件の多くは、企業そのものの取得ではなく、人材の獲得を主目的とするアクハイヤー型に構造化されつつある。しかしVCはそれを歓迎しない。その企業に出資したのは彼ら自身だからだ」と語る。
交渉を通じて、初回提示額から最終額まで平均でほぼ倍に引き上げ
創業者が取引から大きな報酬を得る一方で、投資家が投資リターンを得られなければ、VCモデルそのものの成功が揺らいでしまう。それだけに、交渉はより強気なものとなる。ハイタワーによれば、同社はこれまで、初回提示額から最終提示額まで平均でほぼ倍に引き上げてきたという。
ブレッサーズとハイタワーはともに、Qatalystで過ごした年月によって交渉力が磨かれたと認めているが、それ以上に、シリコンバレーで最も尊敬される人々との関係を築けたことが重要だと述べている。


