AIはついに価値を生み出し始めたのか。そんなことはどうでもいい、さっさと削減を始めよう──。
これは良い戦略なのか。NvidiaのCEO、ジェンスン・フアンはそうは思っていない。彼はCNBCの最近のインタビューでこう語った。「CEOがAIを使って人員削減しているなら、それが意味するのは1つだけだ。想像力がないということだ。次に何が来るのかというビジョンがない。人類史上最も強力なツールを手にしながら、最初の衝動が人を解雇することだった」
残念ながら、こうした姿勢は多くの企業に蔓延している。AIの効果を見極めてから動く企業と比べて、AIを見越した人員削減を行う企業は30倍も多い。約90%の企業が、将来のAIによる生産性向上を見込んで、すでに採用を縮小または凍結している。
これは、スケールド・アジャイルの調査部門であるReturn on AI Instituteが公表した調査からの、気が重くなるような見立てである。一方で同調査は、経営層の過半がAIの取り組みから価値を感じ取っていることも示す。AIのタイプを横断してみると、経営層の45%が「大きな価値」を実現していると答え、別の45%が「中程度の価値」を見ていると答えた。「小さな価値」にとどまると認めたのは9%のみで、「価値が出ていない」と答えた人は1人もいなかった。
定量的な数字で見ても、大多数の組織は、発生したコストに対してAI投資が「わずかにプラスの投資対効果」(48%)または「大幅にプラス」(39%)を達成している。投資がほぼ収支均衡だと報告した回答者はおらず、全体でマイナスのリターンを経験したのは2%にとどまった。
AIの主要カテゴリ全体を見渡すと、生成AIはいまだ比較的未成熟な段階にあると、報告書の著者らは述べる。現在、生成AIを「最も価値の高いAIタイプ」と位置づける組織は9%にすぎない。これに対し、分析AIは50%、ルールベースの自動化は40%で、いずれも数十年にわたる運用成熟度を備えている。
AI成功の最大の障害はデータの準備状況であり、経営層の過半にあたる55%がデータの問題を報告していることも、同調査は示す。約半数の47%は一貫したフレームワークの欠如を挙げ、同じく47%が技術の複雑さを課題として挙げた。
もう1つの重要要因は、従業員とリーダーの準備とトレーニングである。リスキリングとリーダーのAIリテラシーの双方に投資する組織は、価値実現において23ポイントの優位性を得ている。
データには含まれていないものの、同等に大きな影響を持つのが短期志向であり、長期的な含意を考える前にAIを現場投入しようと急ぐ姿勢だ。報告書で引用されたキャピタル・ワンのエグゼクティブVP兼エンタープライズAI責任者であるプレム・ナトゥラジャンは次のように述べている。「短期的価値に焦点を当てることが、多くの企業が長期的価値を解き放つ技術変革を実現できない理由だ。私たちはAIユースケースの便益を慎重に測定し、導入するAIについては徹底的に取り組む。トレーニングに投資し、業務プロセスを変革し、その他さまざまな施策を行う。『ツールを渡すから使ってくれ』という話では決してない」
AIをより有効に活用するための提言として、報告書は次を挙げている。
削減の前に考えること。「AI機能が実際に本番環境で稼働する前に、人員削減や採用凍結によってAIの便益を先取りしようとすることには注意が必要だ」
AIには忍耐が必要である。「高い価値の水準に到達するには数年を要する」
AIタイプの全領域を活用すること。「分析AIは測定可能な価値をもたらしてきた最長の実績を持ち、引き続き重視するに値する。生成AIにも確かな有用性があり、広範な導入というより標的を絞った展開で最大のリターンが得られる。エージェント型AIは、探索する価値のある初期シグナルである」
AI活用領域を広げること。「AIによって社内プロセスや生産性を改善する方法だけでなく、AIを顧客志向の製品・サービスにどう組み込めるかも評価すべきだ」
従業員トレーニングとガバナンスの両方に投資すること。「ガバナンスのないトレーニングは混乱を生み、トレーニングのないガバナンスは官僚主義を生む」



