暗号資産

2026.04.14 16:00

トランプ恩赦で出所、バイナンス創業者が自費出版した「回顧録」は美化か事実か

バイナンス創業者 趙長鵬(チャンポン・ジャオ)(Photo By Ben McShane/Sportsfile for Web Summit via Getty Images)

米司法当局の訴訟に対し、ジャオはどのように向き合ったのか

本書は終盤に差しかかると、成功を積み上げる物語から、その代償を問われる局面へと移っていく。ジャオは、複数の米政府機関が起こした訴訟について、バイナンスが何をしたかよりも、業界最大手にまで上り詰めたこと自体が問題視されたのだと受け止めている。「司法省はなぜか、バイナンスと私に刑事責任を問うことに異様なまでに執着していた。何のためなのか。私にも弁護士たちにも理解できなかった。考えられる理由があるとすれば、私たちが業界最大だったということくらいだ」と彼は記している。

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だが、米政府が示した内容はもっと具体的だった。政府は、バイナンスが疑わしい取引の防止や報告に必要な体制を整備せず、ハマスのアル・カッサム旅団、アルカイダ、ISISに関連する取引を見逃していたほか、米国の利用者とイラン、北朝鮮、シリアなど制裁対象地域の利用者との取引も処理していたと主張した。当局によれば、バイナンスはテロ組織やランサムウェア攻撃者、児童の性的搾取コンテンツ、詐欺や悪質商法に関わるものを含め、10万件を超える疑わしい取引について、故意に報告を怠っていたという。

ジャオは、2023年の大半を、十数人を超える弁護士たちとの連日の電話協議に費やしたと書いている。当初、司法省は68億ドル(約1.1兆円)の罰金を求めていたというが、最終的な和解額は43億ドル(約6837億円)となり、その支払い先は司法省、財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、外国資産管理局(OFAC)、米商品先物取引委員会(CFTC)に分かれていた。この金額は、関与したほぼすべての当局にとって、企業に科された制裁金として過去最大だった。発表当時、メリック・B・ガーランド司法長官は「バイナンスが世界最大の暗号資産取引所になれた理由の1つは、同社の犯罪行為にあった」と述べていた。

生々しい記述で描かれる刑務所生活

刑務所でのくだりは、本書の中でもとりわけ生々しい。ジャオは、メディアが自分を「米国の刑務所史上もっとも裕福な受刑者」と報じていたため、ゆすりやたかりを心配していたという。だが実際に収監されると、ウォール・ストリート・ジャーナルやブルームバーグを読んでいる受刑者はおらず、自分のことを知る者もいないと分かったという。ジャオは、食事や日課、自由を奪われた生活ならではの屈辱についても詳しく書いている。そこには、2人を殺害して30年の刑に服している男と同房だった経験も含まれており、その細かな描写は、本書の他の多くの部分には見られないほどだ。ジャオはその同房者について、「やがて私は、彼のいちばん恐ろしい点は殺人の前科ではなく、いびきだと気づいた。彼のいびきは雷鳴よりも大きく、絶え間なく流れるトイレの水音さえかき消していた」と書いている。

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大統領恩赦を求めていたとの報道を否定

ジャオは、自分が大統領恩赦を求めていたとの報道を否定し、実際に申請したのは、そのような記事を読んだ後だったと記している。申請書を提出したのは2025年4月14日だったという。その2週間後には、トランプ一族の暗号資産ベンチャーであるワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)が、新たに発行したステーブルコイン「USD1」がバイナンスへの20億ドル(約3180億円)規模の出資で使われたと発表した。この実績により、暗号資産ファンの間でUSD1の信頼性は大きく高まった。ジャオへの恩赦は、刑期を終えてからおよそ1年後の2025年10月21日に認められた。

回顧録の出版後、暗号資産取引所OKXの創業者兼CEOが異議を唱える

回顧録に記載されたジャオの説明には、異論も出ている。出版後、暗号資産取引所OKXの創業者兼CEOであるスター・シューがXでジャオを批判した。彼は、OKXの前身であるOKCoinでジャオが10年前に短期間働いていたことに触れた上で、ジャオが「自分を輝かしい偉人として演出するため」に嘘をつき、事実を捏造していると非難した。シューは、ジャオがどのようにOKCoinに加わり、そこを去ったかという説明に異議を唱え、とりわけ、ジャオが自分の婚姻状況について意図的にあいまいな書き方をしていると強く批判した。

2024年4月には、Yang Weiqingと名乗る女性が米連邦地裁にジャオを支持する書簡を提出し、自分は2003年にジャオと結婚したと記したが、離婚には一切触れていなかった。これについてシューは、「もし本当に離婚しているのなら、バイナンスの持ち分は法律に従って適切に分割されたのか」と書いた。

ジャオはこれに強気に反論した。「今なら謝罪を受け付ける。私は正式に離婚している」と彼は書き、元妻への配慮から法的書類は公開しないとしながらも、離婚はずっと前に成立していたことに「10億ドルを[約1590億円]賭けてもいい」と付け加えた。フォーブスは、離婚の時期や条件、持ち分が分割されたかどうかを含めて確認を求めたが、ジャオは回答を拒否した。

回顧録のプロモーションを進行

ジャオは高額のPR会社、Gashalter & Coを起用して、自らの復活を印象づける回顧録のプロモーションを進めている。同社は、スティーブ・コーエンのような物議を醸してきたビリオネアのヘッジファンド運用者を顧客に持つことで知られる。

ジャオはすでに、テック系ビジネストーク番組『TBPN』やポッドキャスト『The Wolf of All Streets』に出演した。回顧録『Freedom of Money』の収益は、すべて慈善活動に充てられる予定だ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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