サイエンス

2026.04.21 18:00

眼から「血を噴射」するツノトカゲ、その防衛戦略が生まれた理由と有効性

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北米の砂漠で長い時間を過ごせば、進化がいかに発明の才に長けているかがだんだんわかってくる。カムフラージュ、とげ(棘)、死んだふりといった、クリエイティブな解決策がそこかしこにあふれているからだ。その上、時にはありえないくらい奇抜な戦略を採用した動物にも遭遇する。その代表例がツノトカゲ(Phrynosoma属)だ。

ツノトカゲは、小さく扁平な、砂と同じ色をした爬虫類で、多数のとげで武装している。そして何より、ほとんどの人がグロテスクと評するであろう防衛戦略を備えている。捕食者に向けて、眼から血を噴射するのだ。

あまりに現実離れしているが、この行動はれっきとした事実だ。反射性眼位出血(ocular autohemorrhaging)と呼ばれ、数十年前から学術文献のなかで記録され、検証され、分析されてきた。行動の外見的な派手さに注目したくなるのはやまやまだが、この現象の裏にある科学的事実は、多くの意味で、見た目以上に興味深い。

血液噴射のメカニズム

ツノトカゲの血液噴射という現象については、早くも1800年代の段階で、初期の博物学者が逸話報告を残している。しかし、20世紀と21世紀に入るまで、統制された実験が行われ、メカニズムが詳細に記録されることはなかった。そんななか、2001年に学術誌『Copeia』に掲載された有名な研究では、複数の種のツノトカゲを対象として、血液噴射行動の多様性が詳細に論じられている。

眼からの血液噴射は、解剖学的にもあり得ない現象に思える。ほとんどの動物にとって、眼は極めてデリケートな器官だ。眼の周囲の血管が破裂するのは、ふつうはケガによるものでしかなく、進化を通じて形成された適応とは考えにくい。しかし研究により、ツノトカゲの血液噴射は、精密に制御された生理的反応であることが実証されている。

ツノトカゲの眼の周囲には、静脈洞のネットワークが存在する。ツノトカゲは脅威を感じた際、頭部から体に向かう静脈還流を選択的に抑制する。これにより、動脈血は頭部に流入しつづけるが、その退路が部分的に閉鎖された状態になる。こうすることで、眼窩内の血圧を急速に高めることができる。

血圧が上昇するにつれ、結膜の毛細血管が破裂し始めるが、これは修復可能な損傷だ。こうして蓄積された血液は、まぶたの隙間から、加圧された一筋の細い流れとなって噴射される。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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