サイエンス

2026.04.21 18:00

眼から「血を噴射」するツノトカゲ、その防衛戦略が生まれた理由と有効性

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特筆すべきは、こうした化学的防御が、すべての捕食者に対して有効なわけではないことだ。1992年に『Copeia』に掲載された重要な論文には、イヌ科動物以外の捕食者(同研究では、カッコウ科の鳥類であるミチバシリと、齧歯類のバッタマウス)は、ツノトカゲの血液噴射反応を引き起こさなかったとある。一方、イヌ科動物は、100%の確率で血液噴射反応を引き起こした。なお、イヌ科動物に扮したヒトに対しては、20%の試行で血液噴射反応が見られた。

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このような特異的な対捕食者防衛は、極めて珍しい。ほとんどの対捕食者防衛行動は汎用的なものだ。カムフラージュは、イヌ科の捕食者も含む、ほぼすべての天敵をだますものであり、とげもまた、捕食者全般からの攻撃を抑止するのに効果を発揮する。ツノトカゲは、この両方を備えている。しかし血液噴射は、イヌ科の捕食者という、極めて限定的なカテゴリーの脅威に対してのみ発動する。

この防衛システムは、実にエレガントだ。ツノトカゲは、もともと化学的防御を備えた獲物を主食としていて、やがて、同じ化学物質を二次的防衛機構として転用するようになった。そして捕食者は、苦い教訓を味わい、この獲物に関わるのは賢明ではない、と学ぶのだ。

ツノトカゲが教えてくれること

進化的観点から見て、ツノトカゲの反射性眼位出血は、「外適応」の典型例だ。外適応とは、当初ある機能を果たすように進化してきた形質が、のちに別の機能を兼ねるように転用されることを指す。

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ツノトカゲの祖先の循環器系は、血液噴射に適した「設計」を備えてはいなかった。『Ichthyology & Herpetology』の論文にあるように、眼位静脈洞はおそらく、乾燥環境での体温調節といった、もっとありふれた役割を担っていたのだろう。同じように、有害物質を含むアリを食べることは、あくまでツノトカゲの採食戦略であって、防衛戦略ではなかった。にもかかわらず、複数の選択圧が絶妙に作用した結果、これらの要素は一つに収束した。

軽微な血管破裂は、はじめは偶発的な損傷だったが、だんだん耐えられるものになり、ついには別の機能を果たすものになった。獲物の化学的組成についても、当初は耐性があるというだけだったが、捕食者の鋭敏な感覚器官に向けることで、効果的な武器となった。その結果として生まれたのが、転用された形質のネットワークを持つトカゲだ。各要素は、単純な総和を超えるかたちで、対捕食者防衛に貢献している。

大型捕食者がもたらす圧力が強く、逃走の選択肢が限られ、食性を通じて化学的リソースを利用できた環境では、こうした奇抜な防衛戦略が理にかなったものになり始めるのだ。

これこそが最大の教訓だ。ツノトカゲは奇妙だ、という話ではなく(間違いなく奇妙ではあるのだが)、進化はこれほどまでにクリエイティブで臨機応変なのだ。十分な時間さえあれば、進化はさまざまな要素を組み合わせて、私たちにはSF作品の設定にしか思えないような形質でさえつくりあげる。

だが、目を凝らしてみれば、そこには進化が最も得意とする手法がはっきりと見て取れる。進化はいつでも、手元にある材料を駆使して、どうにか切り抜けていくものなのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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