サイエンス

2026.04.21 18:00

眼から「血を噴射」するツノトカゲ、その防衛戦略が生まれた理由と有効性

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2024年に学術誌『Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering』に掲載された、詳細な観察記録によれば、この血液噴射は1m先まで到達する。体長10cm程度というトカゲの大きさと比べれば、驚くほどの飛距離だ。さらに注目すべき点として論文著者らは、この血液噴射が、ほとんど例外なく捕食者を直接狙って噴射されたと述べている。

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この指摘は重要であり、血液噴射行動がランダムでも偶然でもないことを示唆している。どちらの研究でも、ツノトカゲは血流を噴射する前に、脅威として知覚した対象に頭を向けていた。ここから、ツノトカゲが血液噴射のプロセスにおいて、自身の運動をある程度制御していること、すなわちこれが単純な条件反射ではなく、標的に向けられた防衛行動であることがわかる。

しかも驚くことに、『Copeia』論文の記述によれば、ツノトカゲは、血液噴射を短時間のうちに何度も繰り返せるし、それによる長期的な悪影響を被ることがないらしい。ある個体(種はPhrynosoma hernandesi)は、17分間に9回の血液噴射をしたと観察された。この行動に関わる器官は、度重なる血圧変動にも、微細な破裂にも耐えられる、見事な適応を遂げているようだ。

ツノトカゲの血液噴射は、自然選択がフェイルセーフ機構と耐用性を組み込んだ、数多くのエレガントなシステムの一例だ。しかし、プロセスの詳細が解明されたとはいえ、多くの人はまだ、最大の謎に答えが出ていないと思っていることだろう。そもそも、なぜこれほど極端な防衛行動を進化させる必要があったのだろうか?

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ツノトカゲが眼から血液を噴射する理由

2024年に学術誌『Ichthyology & Herpetology』に掲載された論文は、この「なぜ」の疑問に、生態学の視点から鋭く迫っている。同研究の主旨は、ツノトカゲの反射性眼位出血は、汎用的な防衛機構ではなく、特定のターゲットに高度に特殊化しているというものだ。著者らが明らかにした、ツノトカゲの血液噴射の主な標的とは、イヌ科の捕食者(コヨーテ、キツネ、イヌなど)だ。

『Ichthyology & Herpetology』の論文によれば、この防衛行動の効果は、血液の化学的特性と結びついている。ツノトカゲは、特殊化した食性をもち、獲物の大部分を、種子食のアリ、特にシュウカクアリ(Pogonomyrmex属)が占める。これらのアリは、ギ酸による化学的防御で知られ、ほとんどの動物はその味に忌避反応を示す。

先行研究から、ツノトカゲがアリを食べて摂取したギ酸やその派生物質は、血中に取り込まれることがわかっていた。2024年の研究では、ツノトカゲとイヌ科動物の遭遇を再現する実験が行われ、化学的防御の効果が裏づけられた。ツノトカゲの血液に接した捕食者は、すぐさまその味に対して拒否反応を示し、頭を激しく振ったり、口を大きく開けたり、自分の体を舐めたりといった行動をとったのだ。拒否反応は、捕食の試みを完全に放棄するほど強いこともあった。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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