サイエンス

2026.04.19 18:00

なぜ人は「夢を見る」のか? 進化生物学者が謎に迫る

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それに劣らず重要な点は、私たちの見る夢の多くが脅威を感じるものではないことだ。脅威を感じる夢であっても、その脅威の多くは非現実的なものだ。そして脅威が現れる場合でも、その脅威は必ずしも、生存や生殖にとって極めて重要な種類の困難をなぞっているわけではない。

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もっと広い視点で見れば、私たちの見る夢は奇妙だ。なんの前触れもなく、ある場面から別の場面へと切り替わる。論理を完全に無視するかたちで、複数の人や場所、時間が混ざりあう。夢の土台にある物語は、そのときには意味があるように思えるが、実際に細かく見てみるとナンセンスだとわかる。そこから、不都合な可能性が浮かび上がる。ひょっとしたら、夢にはなんの機能もないのではないか? 

夢のうち少なくとも一部は、適応に役立つほかのプロセスの副産物かもしれない、と主張する研究者もいる。例えば、記憶の固定や、神経のメンテナンスといったプロセスだ。この見解によれば、脳は睡眠中に重要な仕事をこなしており、夢は単に、その仕事を内側から感じているにすぎないというわけだ。

だからといって、夢に本質的に意味がないというわけではない。これは要するに、夢の真の意味は、夢が語る具体的な物語にあるのではなく、夢が反映している背後のプロセスにあるということだ。

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以上を踏まえると、部分的に重なりあう、いくつかの説得力のある説が残される:

・夢は、脅威をシミュレーションしている可能性がある
・学習と記憶を助けている可能性がある
・情動の調節に役立っている可能性がある
・あるいは、単に脳の「夜間メンテナンス」から生じているだけという可能性もある

残念ながら、上述の可能性は、どれかが正しければどれかが否定される、という類いのものではない。夢をめぐる疑問に関しては、単一で満足のいく答えはまだ得られておらず、夢は、現在でもなお、生物学、認知、体験の交差点にとどまっており、おそらくこの先もずっとそうだろう。夢は半分が機能、もう半分が謎でできているのだ。

夢ほどありふれたものには、何かの目的があるに違いない、と信じる(少なくとも自分に言い聞かせる)のは人間の性だ。だが、最も質の高い科学は、不確実さをそのまま認める。今のところ、最も誠実な答えはこうだ──夢を見ているときのあなたの脳は、何か重要なことをしている。ただ、それが何かについては、我々はまだ完全には解明できていない。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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