サイエンス

2026.04.19 18:00

なぜ人は「夢を見る」のか? 進化生物学者が謎に迫る

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ザドラらの主張によれば、理論の上では、シミュレーションした危険に繰り返しさらされると、以下のことが可能になるという:

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・脅威に対する認知の鋭敏化
・プレッシャーを受けているときの判断の向上
・対応行動(逃げる、隠れる、身を守る、など)の強化

つまり、夢のシナリオが不完全であっても(そういうことは往々にしてある)、脳を鍛えて、起きているときに、速く効率的に反応できるようにする可能性がある、ということだ。だとすれば夢は、災難を寸分たがわず稽古するリハーサルではなく、むしろ、もっと汎用的な調整プロセスだと考えられる。

だが現実には、夢はそれだけで独立して動いているわけではない。睡眠という、もっと大きな構造のなかに組みこまれている。そしてまさにその点で、別の路線の研究が意味をもつ。

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『Cognitive Systems Research』で発表された2009年の研究では、学習と記憶の固定における睡眠の役割に注目した、認知・計算モデルが提示された。それ以前の研究では、私たちの見る夢は「ランダムな衝動」以外の何ものでもないと主張されていた。だが、前述の研究論文の著者チー・ジャンの提唱したモデルでは、「ランダムな衝動」は、以下のような脳のはたらきを表している可能性があるとされている:

・最近の体験を、能動的に再処理する
・重要な神経接続を強化する
・新しい情報を、既存の知識ネットワークに組み込む

この枠組みで見ると、夢は、そうした再統合プロセスの主観的体験を反映したものと考えられそうだ。

脳は、起きているときのこと(記憶、情動、感覚印象など)の断片を復活させ、新たなかたちに組み換える。この組み換えは、そのときには奇妙に見えたり感じられたりするが、私たちが意識的に認識している以上に、深い機能を果たしているのかもしれない。すなわち、情報の再編による学習の強化という機能だ。

ジャンの主張によれば、重要な点は、こうした「オフライン」処理により、脳の一般化能力、つまり過去に学習した概念を新たな状況に応用する能力が向上することだという。そうした能力は、予測不可能な環境において、生存にとって計り知れないほど貴重になるだろう。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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