ザドラらは、この説を検証するために、脅威を伴う内容を特定できるように設計された体系的な評価システムを用いて、繰り返し見る夢212件を分析した。分析結果は決定的とまではいかなかったが、とはいえ、ザドラらの評価では、夢のおよそ66%が、少なくとも一つの脅威を含むと判定された。
脅威には、概して以下のような特徴があった:
・夢を見ている人に向けられる
・正真正銘の危険を伴う(些細な不便などではなく)
・防御または回避の行動がとられる
例としては、追跡、事故、不運、失敗、災害、身体的な負傷、感情的なつらさ、暴力などが挙げられる。どれも、たいていの人が人生のどこかで悪夢として経験するものだ。
54%の事例では、夢を見ている人は、夢のなかの状況に応じて、合理的かつ現実的なやりかたで対応していた。例えば、逃げようとしたり、隠れようとしたりする、といった対応だ。この知見は注目に値する。というのも、夢のなかの行動が必ずしもでたらめではないことを示唆しているからだ。大多数の夢では、状況に対応した行動は妥当なものであり、目的を伴っていた。
この観点からすると、脅威シミュレーション説には説得力があるように思える。 なにしろ、人類の進化史の大部分を通じて、私たちの祖先の生存は、捕食者、同種の敵、環境の危険といった脅威を予期して対応できるかどうかにかかっていたのだ。そうした対応を、完全なものでなくても「練習」できるシステムは、大きな利点になっただろう。
夢が生存を助けるのはなぜか
夢が実際に脅威をシミュレーションするものであるなら、次に生じる最も重要な疑問はこれだ——このシミュレーションにより、進化やほかの面で、実際になんらかの利点を得られるのだろうか?
自然選択という点から言えば、その答えは適応度が握っている。言い換えれば、夢を見ると、生存と生殖のチャンスが大きくなるのか、ということだ。


