サイエンス

2026.04.19 18:00

なぜ人は「夢を見る」のか? 進化生物学者が謎に迫る

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たいていの人は、一生のあいだ、毎日のように、生物学屈指の深さを誇る謎に遭遇する。その謎とは「夢」だ。数多の精密な研究手法や優秀な頭脳を利用できる今でさえ、私たちはまだ夢の謎を完全に解明するには至っていない。

神経学という視点では、夢が生じる仕組みに関してかなりのことがわかっている。夢は、レム(急速眼球運動)睡眠と密接に結びついている。レム睡眠は、脳活動の高まり、筋緊張の低下、鮮明な心象と情動強度の混ざりあいを特徴とする状態だ。だが、いまだ解明されていない、それよりも深い疑問がある。夢ほど奇妙で、エネルギー面のコストがかかるものが、いったいなぜ自然選択によって保存されているのだろうか?

こうした問いについて考えるにあたり、進化生物学者は、「夢が役立つ可能性のある機能」を探る傾向がある。適応を助けているのか? 生存や生殖の能力を向上させるのか? それとも単に、睡眠中に脳が実行している別のプロセスの副産物なのだろうか?

過去20年で、説得力のある説がいくつか浮上している。どれも、夢の謎を完全に解き明かすものではないが、すべてを考え合わせれば、あなたの脳が夜ごと物語を紡ぎ出しているときに何をしようとしているのかについて、その解説とはいかないまでも、それに限りなく近いものを得ることができる。

脅威の仮想現実としての夢

進化という点から夢を説明する有力な説の一つが、脅威シミュレーション説として知られるものだ。この説は、フィンランドの神経学者で心理学者のアンティ・レヴォンスオが、『Behavioral and Brain Sciences』に掲載された2001年の研究論文のなかで最初に提唱した。その5年後、『Consciousness and Cognition』で発表された2006年の研究のなかで、アントニオ・ザドラ、ソフィ・デジャルダン、エリック・マーコットが、この説を明確なかたちにして検証した。

この説によれば、夢が進化したのは、危険な状況をシミュレーションするためだという。夢に見ることで、現実の深刻な結果は被らずに、そうした状況への対応をリハーサルできるというわけだ。ある意味では、私たちが眠っているあいだに脳が「トレーニングプログラム」の原型のようなものを実行し、現実から離れた安全な環境で、私たちを脅威にさらしているとも言える。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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