リーダーシップ

2026.04.13 10:41

形骸化しないリーダーシップ・アジェンダの設定法

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JC Abusaidは、カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く資産アドバイザリーファームHalbert HargroveのCEO兼社長である。

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多くのリーダーは、リーダーシップ・アジェンダの策定を形式的なプロセスとして扱う。年初に導入し、プレゼンテーションで概要を示し、主要な取り組みで支える。そして、いったん言語化されれば、アジェンダは自動的に実行に移されると考えがちだ。

私の経験では、その思い込みこそが、物事が狂い始める地点である。

リーダーシップ・アジェンダとは、毎年1月に発表して終わるものではなく、企業文化を通じて一貫して体現されなければならないものだ。行動が掲げた価値観を反映しないとき、その価値観は意味を失う。価値観は、リーダーの行動と意思決定のなかで可視化される必要がある。時間の経過とともに、リーダーシップ・アジェンダと文化の整合は明らかになる。これが欠ければ、リーダーシップ・アジェンダの信頼性は容易に損なわれる。

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データもこの考えを裏づける。Clearpoint Strategyが2025年に2万件超の戦略計画を分析したところ、プロジェクトの84.5%は未完了で、施策の4分の3以上を完遂した組織は6%未満だった。問題は野心ではなく、実行にある。

実行は、リーダーが集中を保ち、オーナーシップを定義し、勢いを追いかけるのではなく優先順位を見直すことで改善する。

リーダーシップ・アジェンダが失速する場所

アジェンダが失速する要因の1つはエゴである。エゴは静かに善意を蝕み、リーダーが他者の意見を早々に退ける原因になり得る。

一方で、協働は重要だが、全会一致を求めて意思決定を先延ばしにすると、進捗を遅らせることもある。リーダーは、協働と意思決定の適切なバランスを取ることが重要だ。強いリーダーは、耳を傾け、見方を吟味したうえで決める。私は、ここでバランスを失うと勢いが薄れることを実感してきた。

多くのリーダーは、オーナーシップと説明責任が、もう1つの典型的な失敗点であることに気づいていない。同じClearpointの分析では、プロジェクトの57%で明確なオーナーが不在だった。会議は続き、進捗共有も行われるかもしれないが、成果を押し進める責任者がいないため前進が鈍る。明確な説明責任が成功を保証するわけではないが、完遂の可能性を高めることはできる。

また、リーダーシップ・アジェンダを「保証」として提示すると、実行を損なうことがある。市場の変化や予期せぬ課題に対応する余地が小さくなるためだ。従業員は明確な方向性を重視しつつ、どのリーダーにも完璧な先見性はないことを多くの場合理解している。私は、従業員に語る際には確信をもって伝える一方で、フィードバックの余地を残すことを勧めたい。謙虚さを伴う自信は、自信だけよりも強いことが多い。

緊急性の前に明確さ

年初には、あらゆることが緊急で重要に感じられ、すべての取り組みが不可欠に見え、あらゆる依頼が優先順位を争っているように思える。そのような局面では、まず明確さが必要だ。

多くの人にとって、明確さは長期・中期・四半期の目標設定から生まれる。長期目標は方向性を定め、中期のマイルストーンを設けることでビジョンはより扱いやすくなり、四半期の優先事項が、その年の各時点で何が重要かに焦点を当てさせる。Halbert Hargroveでは、各四半期の主要施策を「rocks」と呼び、それを達成するために長期と中期の目標を設定している。これらのrocksを事前に特定することで、その四半期に何を実際にやり遂げる必要があるのかを組織全体に明確にできる。

明確さは、多くのリーダーが考える以上に重要だ。Gallupの調査によれば、2024年に職場で自分に何が期待されているかを理解していた従業員はわずか46%にとどまった。期待が不明確だと、従業員エンゲージメント、生産性、利益が悪影響を受け得る。

一貫した測定とレビューが、アジェンダを軌道に乗せ続ける。私たちは定期的に、何がうまくいっているか、どこに調整が必要か、四半期のrocksが現在のニーズになお整合しているかを評価している。このフィードバックに基づき、整合には変化が必要なこともあるため、優先順位や期限を見直す場合もある。優先順位を設定する前には、全社のリーダーから意見を求める。すべての提案が計画に組み込まれるわけではないが、対話そのものが整合と透明性を研ぎ澄ますからだ。意思決定がどのように、なぜ行われるのかが分かっていれば、人は決定を支持しやすい。

不確実性のなかで率いる

協働は状況が安定しているときに機能しやすいが、不確実性が高まると、人は明確で信頼できるリーダーシップを求める。最も重要なのは、平静さと一貫性を示し、状況がそうでないときでも、周囲が足場を得られるようにすることだ。

不確実な時代における安定化の力は信頼だと、私は実感している。Edelmanは世界的な調査で、従業員の78%が「雇用主は正しいことをすると信頼している」と回答したとしており、雇用主は最も信頼される機関の1つになっている。この信頼は、完璧さではなく一貫性によって築かれる。

当社がより従業員オーナーシップの強い構造へ移行した際、当初は反発があった。利点は長期的なものだったため、結果が見える前にプロセスを信じてほしいと人々に求めた。私は計画を言語化したが、本当の課題は、疑問や懸念が持ち上がるなかでも揺らがずにいることだった。そこで求められたのは、なぜそれを行うのかを明確にし、確信を示しつつ、プロセスを進めるなかで耳を傾けるだけの開かれた姿勢を保つことだった。このような瞬間こそ、リーダーシップ・アジェンダが持ちこたえるのか、崩れ始めるのかが決まる。

効果的なリーダーは、柔軟性と確信が両立することを理解している。このバランスが勢いを保ち、信頼性を守る。文化、説明責任、コミュニケーションにおける一貫性は、環境が変化しても安定を生み出す。

リーダーシップにおけるマインドセットの転換

キャリアの初期、私はリーダーシップとは部屋のなかで最も詳しい専門家であること、あらゆる細部を掌握し、あらゆる変数をコントロールすることだと考えていた。経験を重ねるにつれ、その見方は変わった。リーダーシップとは、すべての答えを持つことよりも、他者が力を発揮できる環境をつくることに近いと分かった。明確なオーナーシップ、定義された期待、そしてやり遂げる力は、コントロールよりもはるかにパフォーマンス改善に資する。

リーダーシップ・アジェンダは、単発の発表ではない。意思決定、コミュニケーション、説明責任を通じて日々強化される行動のパターンである。文化が本物で、オーナーシップが明確で、リーダーが適応力と確信のバランスを取るとき、アジェンダは可視化される。

それは、組織の運営の仕方そのものになる。

forbes.com 原文

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