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2026.04.15 17:00

1日24億円のSoraから79兆円のスターゲートまで──OpenAIの製品と案件の実態

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人工知能(AI)分野の巨人であるOpenAIは3月下旬、ディズニーとの間で進めていた、「Sora」をめぐる10億ドル(約1580億円。1ドル=158円換算)規模の提携契約を突如白紙に戻すと発表した。だが、同様のケースはこれだけではない。OpenAIは、史上最大級の1つとなる資金調達ラウンドを発表する一方で、これまで数千億ドル(数十兆円)規模の案件やさまざまな製品構想を次々と打ち出してきたが、その多くは実現に至っていない。

手当たり次第に手を広げてきたOpenAIが、財務規律を重視する方向に転換

OpenAIのアプリケーション部門CEOフィジー・シモは、2026年1月のフォーブスの取材で、同社の手当たり次第に手を広げるような製品戦略が、同じテーマに沿ったバリエーションだと擁護した。そこには、広告やショッピング、ヘルスケア、SNS、ブラウザー、物理デバイス、動画生成、App Storeのようなマーケットプレイスまで含まれている。シモはその際、「AIはあらゆるものを変えていく。だから、我々はこれらをまったく別々の賭けとは考えていない」と述べていた。

しかし、その2カ月後にOpenAIは、これまでで最も派手な取り組みから撤退した。同社は2026年3月24日、人気を博した動画生成AIアプリ「Sora」の提供を終了し、ディズニーとの「画期的」とされたライセンス契約を白紙に戻すと発表した。ディズニーは、このプロジェクトに10億ドル(約1580億円)を出資する予定だった。

この動きは、OpenAIがより財務規律を重視する方向に舵を切ったことの表れだ。新規株式公開(IPO)の可能性を見据える同社は、収益を生む製品を求めるプレッシャーに直面している。競合のAnthropicが勢いを増す中、本筋ではないプロジェクトを次々と切り捨てている

OpenAIの2025年の売上高は、130億ドル(約2.1兆円)に達した。しかし同社は今もなお赤字から抜け出せておらず、現在はコーディングと企業向け生産性ツールなど、需要がすでに実証されている分野に注力している。

スタートアップが、事業を見直すのは異例のことではない。「我々は、良い判断もすれば、判断を誤ることもある。ただ、フィードバックを受け取り、誤った判断はできるだけ早く修正していく」と、OpenAIのサム・アルトマンCEOは2025年10月、Soraについて書いたブログの投稿で述べていた

だが、OpenAIの度重なる方針転換は、周囲を振り回しており、発表されて以降に実現していない案件やプロジェクトは、これ以外にも数多くある。その1つが、アップル出身の著名デザイナーのジョニー・アイブが設計を手がけるAIハードウエア製品で、OpenAIは、彼の会社を総額60億ドル(約9480億円)超の、主に権利未確定株で買収した。人々の生体情報を基盤にした謎めいたSNSの構想もあるが、アルトマンがこれまで掲げてきた数々の約束のうち、どれが現実になるのかは見通せない。

以下に、OpenAIがこれまで発表した製品や案件のうち、当初の期待に見合う形で進んでいないものを紹介する。ここには、すでに消滅したものや遅延しているもの、まだ行方が定まっていないものが含まれる。

発表した製品が次々と提供終了や無期限保留となり、当初の期待を裏切る

OpenAIは2025年12月、同社が「画期的」と呼ぶディズニーとの提携を発表した。この契約で両社は、メディア大手のディズニーが10億ドル(約1580億円)を出資し、ディズニーを代表するキャラクター200体をOpenAIの動画生成アプリ「Sora」で利用できるようにすることで合意していた。これに対し、ディズニーはSoraで生成した動画をDisney+で配信し、OpenAIのモデルを使った新たなアプリケーションも開発する予定だった。当時、アルトマンはSoraを「人間とコンピューターの関わり方の未来を左右する重要な技術」と位置づけ、「創造性の領域におけるChatGPTのような存在」と呼んでいた。

当時ディズニーCEOだったボブ・アイガー(2026年3月中旬に退任)も、Soraを高く評価していた。彼は、アルトマンの先を読む力や、知的財産の価値を尊重している点を称えていた。「私は、この投資が有望だと考えている」と、アイガーは2月にフォーブスに語っていた。

しかし3月、OpenAIはSoraの提供を終了し、ディズニーとの契約も白紙に戻すと発表した。ピーク時には1日当たりの計算資源のコストが推定1500万ドル(約24億円)に達していたSoraは、利用が急減していた。Sensor TowerとAppfiguresはいずれも、Soraの累計アプリ内売上高が300万ドル(約4億7000万円)未満だったと推計した。 OpenAIは、Soraに関連するAIモデルの提供も停止した。

ディズニーの広報担当者、マイク・ロングは、「立ち上がったばかりのAI分野が急速に進化する中で、OpenAIが動画生成事業から撤退し、優先分野を別に移すという判断を下したことを、当社は尊重している」とフォーブスに語った。

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翻訳=上田裕資

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