ブランドは、オフラインであることの文化的価値を活用している。コーチは「母親向けのバッグ」というイメージから脱却し、Z世代にとって最も魅力的なファッションブランドの1つに生まれ変わった。その成功の一因は、若者が現実世界でコーチと関わることができる機会を提供していることにある。コーチはインドネシアの首都ジャカルタや東京、米国各地にコーヒーショップを展開している。コーチのコーヒーショップでは抹茶やアイスコーヒーを購入でき、それにより若者がコーチにアクセスしやすくしている。さらに重要なのは、若者にとっての第三の居場所を提供している点だ。
オンラインで生まれた、モデルでインフルエンサーのヘイリー・ビーバーが手掛けるスキンケアブランド、rhode(ロード)は、ポップアップや体験型マーケティングに積極的に投資している。例えばフォトブースを設置し、ファンが写真を撮ってSNSで共有できるようにしている。Miu Miu(ミュウミュウ)は文学クラブを立ち上げ、女性作家による書籍をテーマに作家や思想家を招いたパネルディスカッションを開催している。人工知能(AI)による低品質なコンテンツやネガティブなニュースのとめどない閲覧があふれる世界で、物理的な本や知的活動は究極のステータスシンボルとなっている。
オフライン回帰の最大の皮肉は、その意味や社会的価値を生み出すためにオンラインでの発信に依存している点だ。人々を切り離してきたツールが、オフラインでどれほどつながっているかを共有するためにも使われている。2026年においてオフラインであることは流行であり、入念に計画され、決して完全にオフラインではない。だがこうしたオフライン活動が持つ憧れの対象としての性質は、仮想と現実の間のより健全なバランスに向けた一筋の希望となるかもしれない。


