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2026.04.16 12:00

混迷のイラン情勢──誰が中東に核兵器を持ち込むか、持ち込まれる可能性はあるのか

2026年2月26日、イランのテヘラン。画像中央の煙突状のものと、その直下にある半球状の建築物は、イラン原子力庁(AEOI)傘下のテヘラン原子力研究センター(TNRC)。研究炉(TRR)で知られる(Photo by Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

中東への核移転をめぐり、複数の第三国が取り沙汰される

現時点で、この地域で核武装しているのはイスラエルのみであり、何十年もその状況が続いている。イスラエルが完全な核のトライアド(三本柱)を開発したことを示す兆候もある(編注:核のトライアドとは、陸上発射ミサイル・潜水艦発射ミサイル・航空機搭載核爆弾という3つのプラットフォームすべてで核戦力を保持する体制を指す)。

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次期モサド長官のかつての論文内容は、イスラエルの核弾頭を中東3か国へ売却するという提案

2025年9月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ロマン・ゴフマンを次期モサド長官に任命すると発表した。イスラエルのニュースサイトYnetは、ゴフマンが2019年末に論文を執筆していたと報じた。「Yesterday's Doomsday(昨日の終末)」と題されたその論文は、「イランの核危機に対する過激な解決策──イスラエルの核弾頭をエジプト、サウジアラビア、トルコに売却すること──を提案していた」という。

ゴフマンは、イランが核兵器を間もなく獲得する段階へ進んだという仮想シナリオの一部として、この解決策を提示した。「従来の軍事的・外交的手段で地域の核武装化を阻止するのではなく」とYnetの記事は続けた。「ゴフマンの論文は、極めて型破りな対応──新たな多極的戦略均衡を生み出すため、中東の主要3カ国に核兵器を管理された形で移転する──を構想している」。

地域全体への核拡散を示唆することで、イスラエルは主要な域外大国を巻き込むことになる。

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もちろん論文全体は仮説にすぎないが、イスラエルは今、自らが想定したのと似たシナリオに直面していると感じているのかもしれない。とはいえ、それはイスラエルが非公表の核備蓄の一部をアラブ諸国へ移転する寸前だという意味ではない。Ynetが強調したように、「たとえ架空の文脈であっても、中東全域へ核兵器を拡散させる提案は、イスラエルの安全保障ドクトリンからの急激な逸脱と見なされ得る」。

NATOの核共有協定に基づき、米国はトルコに核爆弾を配備

中東に存在する他の核兵器は、米国のものだけである。1950年代後半以降、米国はNATOの核共有体制の一環としてトルコに核爆弾を配備してきた。これらは常に米国の指揮統制下に置かれてきた。

配備初期には、ワシントンでこの核兵器の安全性に懸念があった。国家安全保障アーカイブの機密解除文書は、とりわけ、米議会の原子力合同委員会のスタッフが国務省に対し、トルコの軍事クーデターの指導者が「十分に保護されていない兵器の1つ以上を掌握するかもしれない」と警告していたことを明らかにしている。

米国とトルコの関係は、1974年のトルコによるキプロス介入後に低迷した。ワシントンは、その侵攻で米国製兵器が使用されたことを理由に、トルコへの軍事援助を停止した。トルコ政府は対抗して軍事基地の閉鎖に動いた。関係がさらに悪化し続けた場合、米国はトルコにある自国の核弾頭の安全を懸念した。また、トルコが隣国ソビエト連邦に対する主要な抑止力としてそれらの存在を重視していたため、撤去の結果についても危惧していた。最終的に、この危機は関係の重大な断絶に至ることなく収束した。

冷戦終結から数年後、トルコに配備されていた米国の核戦力は、南東部のインジルリク空軍基地に保管された最大50発のB61核爆弾で構成されていた。2019年、トルコがロシア製の戦略的S-400地対空ミサイル防衛システムを購入し、さらにシリアで国境を越えた軍事作戦を実施したことをめぐって新たな関係危機が生じる中、これらの自由落下式爆弾を撤去すべきだという声が再び高まった

トルコにおける米国の核配備は、イランが追求し得るもの──核兵器の完全な移転──とは明らかに異なる。イランは長らく、同盟国であっても自国領内に外国軍を受け入れることに慎重であり続けてきた。そのため、テヘランは、米国が西側の隣国と長年続けてきたのと同様の取り決めで、ロシアや中国が自国領内に核兵器を配備すると申し出たとしても歓迎しないかもしれない(もちろん、北京とモスクワがそもそもそのような提案をする可能性は低い)。

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