香りをアプリで届ける──Horizon「Scentdays」
一般投票で最多の支持を集めグランプリに輝いたのは、香りのデジタル配信プラットフォーム「Scentdays(セントデイズ)」(Horizon株式会社)だった。専用ディフューザーと連携し、アプリで選んだ香りを空間に再現できる、いわば「香りのiTunes」。クリエイターが自作の香りデータをアップロード・販売することも可能だ。
Horizon代表取締役のニェンツァオ・ツァイは「人の五感の中で匂いだけがダウンロードできなかった。それを可能にしたのが私たちの技術。香りのデジタル化を実用レベルで実現しているのは、世界で私たちだけ。日本はやはりすごいと思われるような事業にしていきたい」と力を込めた。
AI時代、知財は「守るもの」から「育てるもの」へ
授賞式のあとには、発明文化人を受賞した引地耕太と守屋貴之、知財図鑑編集長の荒井亮によるトークセッションが行われた。テーマは「知財を文化として育てるには何が必要か」。
引地はこみゃくの設計思想を振り返り、万博のデザインシステムには人間の命だけでなく、動植物の命、そしてAIやバイオテクノロジーによって生まれる新しい命も含めて表現したと語った。「アニミズム的に捉えれば、それも一つの命。その考え方を海外で話すと、面白いと言ってもらえることが多い」。
守屋もimmaの海外展開にあたり、当初ヨーロッパで「人間を作ってはいけない」と宗教的な批判を受けた経験を語った。それに対し、immaの名前に込めた神道やゾロアスター教の思想を説明し、「キャラクターとして命を与えているという点で、ドラゴンボールの悟空と変わらない」と、日本のキャラクターIP文化の延長線上にバーチャルヒューマンを位置づけたことで理解を得たという。
話題はAI時代の知財のあり方にも及んだ。守屋は、AIによって制作のコストが劇的に下がる一方で、大量に消費されるコンテンツは記憶に残りにくくなっていると指摘。これを受けて引地は、「消費されるだけでは価値が生まれにくくなる」とし、次のように応じた。「こみゃくのファンコミュニティでも起きていることだが、人々はコンテンツを消費しているのではなく、関係性を育んでいる。その関係性の土台をどう設計し、作り上げていくかが、これからの知財のあり方で大切になるのではないか」。
核となる思想やエゴを持ちながら、人々が参加できる余白を残す。知財を「守るもの」から「育てるもの」へと捉え直す二人の対話で、イベントは締め括られた。
終了後の懇親会では、受賞者や来場者の交流がそこかしこで盛り上がりを見せ、知財の展示を実際に体験する参加者の様子も多く見られた。出村が冒頭で掲げた、「取り戻す5年」。同氏は、その起点となるのは日本にある膨大な知財の「新結合」だと訴えた。40の受賞知財とそれを支える人々の熱量は、その萌芽を確かに示していた。


