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2026.04.13 14:15

世界3位の発明大国は、なぜ知財で稼げないのか──「第6回 知財番付」授賞式に見た突破口

おにぎりが泣いて、食品ロスを大幅減──ファミリーマート×GO「涙目シール」

創造性部門のグランプリには、「涙目シール」(株式会社ファミリーマート、株式会社GO)が選ばれた。賞味期限が近づいた中食商品に貼る値下げシールを、「たすけてください」というメッセージと涙を浮かべた食べ物のキャラクターのデザインに刷新。単なる値引きの訴求ではなく、消費者の感情に訴えかけるコミュニケーションを通じて、食品廃棄量の削減に大きく寄与した。2024年の実証実験を経て、2025年3月から全国のファミリーマート、約1万6300店で展開されている。

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ファミリーマート サステナビリティ推進部部長の大澤寛之は「『安い』『お買い得』だけでなく、『助けてあげたい』『食品ロスを減らしたい』という、お客様自身も気づいていなかった意識に触れることができた。知財とは、デバイスや複雑な数式だけではなく、人の心を動かして行動を変えるアイデアでもある」と語った。また、涙目シールのデザインはフリー素材として無償公開されており、同氏は「一社にとどめず、業界の垣根を越えて世の中全体で食品ロスが減る社会を実現したい」と話した。

ファミリーマート サステナビリティ推進部部長 大澤寛之(左から2人目)
ファミリーマート サステナビリティ推進部部長 大澤寛之(左から2人目)

審査を務めたアズビル デジタルイノベーションラボの佐藤適斎は「創造性部門は、受け手に強いメッセージを発する、物語性のある知財ばかりだった。涙目シールは、まさにその代表。おにぎりが泣いて助けてくれと言っている、それだけのシンプルな表現が、地球を救うというスケールの世界観まで人を連れていく。そのパワーがすごい」と評した。

電気で味を変え、食を豊かに──キリン×明治大学「エレキソルト」

将来性部門のグランプリは、微弱な電流で食事の塩味や旨味を増強する食器型デバイス「エレキソルト」シリーズ(キリンホールディングス株式会社、明治大学 宮下芳明研究室)が受賞した。カップやスプーンの形をしたデバイスで、食品を介してごく微弱な電流を流し、塩味やうま味を増強。減塩食でも味の満足感を得られるため、健康と食の楽しさを両立できる。

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共同開発者である明治大学の宮下芳明教授は「電気味覚の研究分野は、日本が世界のトップを走っています。エレキソルトは技術投入の一例に過ぎず、さらに新しい可能性を創造できると信じています」と語った。エレキソルトを開発したキリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部の佐藤愛も、「食事はいくら健康によくても、楽しくないと続けられない。電気の力で食を楽しむということを産業として目指していきたい」と展望を述べた。

明治大学教授 宮下芳明
明治大学教授 宮下芳明

審査員の新東通信 ソーシャルビジネス事業本部の榎本裕次は「減塩やダイエットを我慢ではなくテクノロジーで支えるという発想が素晴らしい。シェフやレストランがこの技術を前提にどんなレシピを生み出すかまで含めて、将来性がある」と評価した。

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文=加藤智朗

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