大阪・関西万博で証明された「開く知財」の力
オープニングセッションに続いて、授賞式が行われた。新設された「発明文化人」は、新たに生み出したテクノロジーやデザインを社会に根づかせ、文化として定着させたリーダーを称える賞だ。初代受賞者として安野貴博(参議院議員/チームみらい党首)、引地耕太(VISIONs CEO/COMMONs代表理事)、守屋貴之(Aww/NION代表取締役社長)の3名が選出された。
引地は大阪・関西万博のデザインシステムのクリエイティブディレクターを務めた人物だ。万博のロゴマークを起点に設計したデザイン要素「ID」は、SNS上で「こみゃく」の愛称がつき、二次創作の広がりが社会現象となった。管理者がコントロールするのではなく、誰もが参加・共創できる「開かれたデザイン」を設計思想として掲げ、国際イベントの規模でそれを実証した。
登壇した引地は、こみゃくをめぐる3つの転機を振り返った。1つ目は、自身が設計したデザインシステムが実際の運用では当初の意図に反して厳格に管理されていると指摘を受け、あらためて万博のデザイン担当として復帰したこと。2つ目は、デザインシステムの一要素にすぎなかった「ID」に対し、ネット上で「こみゃく」という愛称が自然発生し、ファンによる二次創作が広がったこと。3つ目は、この「こみゃく」の商標を無関係の第三者に先取りされるリスクが浮上し、万博協会と連携して商標を押さえたことだ。
「皆さんの愛着が商標を生んだ。つまり知財とは、愛なのだと思いました。これからもこの愛を育て続けて、文化として引き継いでいきたい」(引地)
同じく「発明文化人」を受賞した安野は、AIで市民の声を可視化する「ブロードリスニング」など、テクノロジーによって政治への市民参加を促す取り組みが評価された。また守屋は、バーチャルヒューマン「imma」を生み出し、世界的ブランドとの協業や東京パラリンピック閉会式、万博開会式への起用を実現するなど、デジタル上の人格という新たな知財を産業として確立した功績が認められた。


