北米

2026.04.11 09:00

米国防次官がバチカン大使を恫喝か、「アヴィニョン捕囚」示唆と報道 国防総省は否定

米国防総省のエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)。2026年2月12日、ベルギー・ブリュッセルで開催された北大西洋条約機構(NATO)国防相会議にて(Leon Neal/Getty Images)

米国防総省のエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)。2026年2月12日、ベルギー・ブリュッセルで開催された北大西洋条約機構(NATO)国防相会議にて(Leon Neal/Getty Images)

米国防総省の高官がバチカン(ローマ教皇庁)の駐米大使に対し、ローマ・カトリック教会が米国の取り組みを支持しなければ軍事的対応も辞さない、と受け取れる漠然とした脅迫を行ったと米メディアが報じた。米国防総省の報道官は9日、問題の発言があったとされる1月の会談は「敬意あるもの」だったと表明し、報道内容を否定した。

匿名の国防総省報道官は、米国の宗教系通信社レリジョン・ニュース・サービスを通じて会談が行われたことを認めたものの、米パラマウント・スカイダンス傘下の中道右派オンラインメディア、ザ・フリー・プレスの報道については「極めて誇張され、歪曲されている」と主張。国防総省が「教皇聖座に対して抱いているのは最上級の敬意のほかはなく、継続的な対話を歓迎している」と述べた。一方で、会談の詳細については触れなかった。

駐米ローマ教皇庁大使館の事務局もレリジョン・ニュース・サービスの取材に、3月まで駐米バチカン大使を務めたクリストフ・ピエール枢機卿が今年1月22日、時事問題について話し合う「通常の」会合を米国防総省の複数の高官と行ったことを認めたが、具体的な内容は明かさなかった。

これに先立ち、ザ・フリー・プレスは1月の会談が緊張した雰囲気の中で行われたと報道。エルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)がピエール枢機卿に対し、米国には「世界で望んだことを何でもできる」軍事力があると警告し、ローマ・カトリック教会は「米国側に付いたほうがいい」と述べた上で、14世紀の「アヴィニョン捕囚」の脅威をほのめかしたと伝えた。

「アヴィニョン捕囚」とは、フランス国王フィリップ4世が軍事力を用いてバチカンを掌握し、教皇ボニファティウス8世に退位を迫った末、教皇聖座をローマから南仏の片田舎アヴィニョンに移して複数の教皇にフランス滞在を余儀なくさせた時期をさす。

ザ・フリー・プレスによると、国防総省の当局者らは教皇レオ14世が1月に行った演説で「対話を促進し、すべての当事者間の合意形成を目指す外交が、力に基づく外交に取って代わられようとしている」と述べたことに憤慨していたとされる。

レオ14世の言葉を紹介する個人ニュースレター『Letters from Leo(レオ教皇からの手紙)』を運営するクリストファー・ヘイルは、匿名の情報源を引用し、一部のバチカン当局者がコルビー次官の発言を「聖座に対する軍事力行使の脅威」とみなしたと伝えた。さらに、この会談はバチカン当局者を警戒させ、今年後半に予定されていたレオ14世の訪米が中止されたとしている。

この報道は、レオ14世がドナルド・トランプ大統領の対イラン軍事作戦をめぐって異例の非難を表明する中で出てきたものだ。

レオ14世はイラン攻撃について何と発言してきたか

米軍の対イラン作戦開始直後、レオ14世は「暴力の連鎖」によって「取り返しのつかない深淵」が生じる恐れがあると警告。3月後半の「枝の主日」のミサでは、「イエスは平和の王であり、戦争を拒絶される。誰も戦争の正当化にイエスを利用することはできない」と語り、さらに「イエスは戦争を起‌こす者たちの祈りを聞くことはなく、それらを拒絶される」と述べた。

今週初めにトランプ大統領が、ホルムズ海峡の再開要求にイランが応じなければ「今夜、(イランの)文明全体が滅び、二度と蘇ることはないだろう」とトゥルース・ソーシャルに投稿すると、レオ14世はそのような脅しは「到底容認できない」と批判。人々に対し「戦争を拒絶しなければならない。多くの人が『不当な戦争』だと指摘し、激化の一途をたどり、何一つ解決できていない戦争なら、なおさらだ」と呼びかけ、「民間インフラに対するあらゆる攻撃は国際法に違反する」とも訴えた。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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