経営・戦略

2026.04.19 15:00

社員46人で営業利益1000億円超、利益率50%のSNS「OnlyFans」はなぜ売却に苦しむのか

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英国発の成人向けSNS「OnlyFans(オンリーファンズ)」は、コロナ禍で世界的に急拡大した。利用者数は3億7700万人、クリエイター(コンテンツ投稿者)は460万人。2024年の売上高は14億ドル(約2200億円。1ドル=158円換算)、営業利益は7億2000万ドル(約1140億円)に上る。利益率は50%を超え、正社員は46人という異例の超高収益モデルだ。

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そのオーナーとして47億ドル(約7400億円)の資産を築いたウクライナ系米国人の起業家、レオニード・ラドビンスキー(43)は末期がんを患っていた。OnlyFansは2026年3月23日、彼の死去を発表した。

ラドビンスキーは生前、OnlyFansの売却交渉を進めていた。しかし、成人向け事業の売却には米国特有の障壁がある。多くのベンチャーキャピタル(VC)やバイアウトファンドは、出資者との契約で、たばこ・ギャンブル・武器・ポルノなど物議を醸す分野への投資を禁じる「バイス条項」を課されているためだ。加えて、米国のアダルト業界は、VisaやMastercardの決済方針次第でサービスの存続が左右される、構造的なリスクも抱える。

本稿は、オーナーの死を背景に進む異例の取引の全貌と、そこに潜むリスクを関係者の証言から描き出す。

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オーナーの死を背景に、8690億円規模の売却交渉が急ピッチで進む

OnlyFansは、秘密主義のレオニード・ラドビンスキーにとって、「金のなる木」だった。投資家は、無名のクレジットファンドによるラドビンスキーの持ち分買収に向けての提案に首をかしげたが、やがて彼が末期がんと診断されていたことを知ることになる。

その提案は、ある意味タブーに踏み込むものだった。しかし、OnlyFansの性的コンテンツに対して顔をしかめる投資家も、その財務内容には強く引きつけられた。

2024年の営業利益1140億円の会社に、極めて低い評価額が提示される

サンフランシスコに拠点を置く無名のクレジットファンドが主導するこの取引は、コロナ禍で世界的な人気を獲得した英国発のこのサイトに対し、55億ドル(約8690億円)の評価額を提示した。この金額は、2024年に14億ドル(約2212億円)の売上高と7億2000万ドル(約1138億円)の営業利益を生んだサイトとしては、極めて低い水準だった。

だがその後、投資家は、ラドビンスキーが末期がんと診断されていたことを知ることになる。関係者によれば、彼の健康状態の悪化こそがOnlyFansの売却理由であり、交渉が急ピッチで進められた背景でもあった。

有力視される後継者は、妻のエカテリーナ・チュドノフスキー

OnlyFansは3月23日、ラドビンスキーの死去を発表した(死亡した時期や場所は明らかにしていない)。後継者として有力視されているのは妻のエカテリーナ・チュドノフスキーで、関係者は彼女を事実上のビジネスパートナーだと説明している。

関係者によれば、この取引はラドビンスキーの死去の数週間前になって条件が見直されており、いまだ成立には至っていない。買収に名乗りを上げているのは、サンフランシスコを拠点とするファンドのArchitect Capitalだ。2020年設立の同社は、コロンビアのフードデリバリー企業Rappiのような急成長中の中南米スタートアップに融資を行うことで事業を拡大し、現在は経営危機に瀕した企業への投資に軸足を移しているようだ。

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翻訳=上田裕資

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