クレジットカード会社への依存や競合・AIの脅威が、事業の存続を脅かす
機関投資家の資金を、きわどいビジネスに呼び込もうとするセーガンの提案は異例だが、アダルト業界でこれまでに成立した取引の中で、特に異様というわけでもない。Pornhubの親会社MindGeekは2023年、自社サイトに出演者の同意を得ていないコンテンツを掲載していたとして相次いで訴訟を起こされた後、無名に近いバイアウトファンドのEthical Capital Partnersに、非公表の金額で買収されていた。
OnlyFansもまた、規制当局の監視対象となってきた。ロイターが2024年に行った調査では、児童への性的虐待を記録した素材が少なくとも26のOnlyFansアカウントに掲載されていたことが判明した。2025年3月に同社は、年齢確認手続きに関する情報開示を怠ったとして、英国で140万ドル(約2億2000万円)の制裁金を科された。
クレジットカード会社への依存をめぐるリスク
OnlyFansは長年にわたって巨額の利益を生み出してきたが、2025年には成長が鈍化し、クレジットカード会社への依存をめぐるリスクが存続そのものを脅かしている。ある投資家が確認したOnlyFansの財務概要によると、同社の昨年の売上高は約15億ドル(約2370億円)、利益は7億ドル(約1106億円)超で、2024年の実績を上回る程度にとどまっていた。
ラドビンスキーは、2018年にこのスタートアップを英国人創業者のティム・ストークリーから買収し、当初は認められていなかったアダルトコンテンツへと軸足を移した。OnlyFansの事業は、パンデミック下で急成長したが、その成長は、利用者がクレジットカードでコンテンツの代金を支払えることを前提に成り立っていた。
OnlyFansの初期の決済処理を手がけていたPayKingsのCEOカイル・ホールによると、VisaとMastercardは長い間、このインターネット空間の一角に深く踏み込むことを避けてきた。だが2020年12月に、ニューヨーク・タイムズがPornHubにおける児童搾取を調査報道したことで、両社はアダルト業界を詳しく調べざるを得なくなったという。
当時CEOだったストークリーによると、銀行から不当な扱いを受け、クレジットカード決済を停止されかねない状況に追い込まれたことで、OnlyFansは方針転換を余儀なくされた。2021年8月、ラドビンスキーはクリエイターによる露骨な性的コンテンツの投稿を禁止すると発表したが、激しい反発を招いた。そして、6日後に方針を撤回した。OnlyFansは当時、Xへの投稿で「多様なクリエイターのコミュニティを支えるために必要な確約を得た」と説明していた。
カナダの銀行BMOハリス、2022年初めにOnlyFansのすべての口座を閉鎖
だが、そうした安定は長くは続かなかった。ホールによると、2022年初め、PayKingsの提携先の決済処理会社を通じて、カナダの銀行BMOハリスの米国部門にあったOnlyFansのすべての口座が、リスク上の懸念を理由に閉鎖されるという通知を受けたという。「OnlyFansは極度に追い詰められていた。ある晩いきなり口座を止められたからだ。事前の通知は一切なかった」とホールは話す。
彼によれば、口座が閉鎖された後、OnlyFansは決済処理を引き受けてくれる業者を探し、少なくとも30社に申請を出したという。「ここまで多くの先に申し込むのは、相当追い詰められていたことの証拠だ」とホールは述べている。BMOはフォーブスのコメント要請に応じていない。
取引に近い関係者によると、セーガンは出資候補に対し、自分ならOnlyFansが抱える規制面の悩みを解決できると説明している。同社の事業上の大きなコストの1つが、決済会社との取引だ。そうした会社は、VisaやMastercardの反発を買うリスクを織り込んで、10%超に達することもある高い手数料を課している。取引に詳しい関係者によると、こうした手数料はOnlyFansの売上原価のかなりの部分を占めている。登記資料では、2024年の売上原価は5億4900万ドル(約867億円)となっていた。
OnlyFansのクリエイターも、サイト本体とよく似た問題に直面している。彼らと性産業とのつながりを理由に、銀行が口座を閉鎖してしまうのだ。セーガンは投資家向けの提案の中で、銀行免許を取得し、クリエイターがより安定して報酬を受け取れるようにするとともに、彼らの取り分を増やす構想も示していた。
こうした施策が実現すれば、OnlyFansの収益は押し上げられるだろう。だが、同社の事業が抱える根本的な現実は変わらず、将来の投資家が出口戦略を描くのは簡単ではないかもしれない。この案件を検討した投資家は、Architectが「最短3年で株式公開できる」と主張していることに懐疑的だった。
PassesやPatreonに加え、AI生成コンテンツも脅威に
VisaとMastercardに収益の流れを止められるリスクを抑え込めたとしても、なお別の危うさが残る。この案件を検討した複数の投資家は、OnlyFansの先行者としての強みも、より低い手数料を打ち出す競合に奪われかねないと判断し、交渉から離脱した。ビリオネアのルーシー・グオが手がけるPassesや、Fanfix、Patreonといったサービスはすでに、インフルエンサーやクリエイターが、OnlyFansのリンクをSNSに載せることで生じるイメージの悪さを避けながら、ファンを収益化できる場を築いている。
加えて、AIという脅威もある。買収を検討した投資家はフォーブスに対し、AIが生成する成人向けコンテンツやチャットボットの市場が広がることで、人間のクリエイターへの需要が落ち込むことを懸念していたと語った。
セーガンは期限の延長を勝ち取ったが、この独占交渉権にも再び期限が迫っている。ただ、機関投資家向けファンドとは違って、きわどいビジネスへの投資制約がないファミリーオフィスの間では、一定の手応えを得ているようだ。
この買収が実現すれば、異例の大型ディールとして注目を集めるかもしれない。だが、投資家がポルノ事業の買収に乗り気だったとしても、相続に関わる法的問題や、新たに未亡人となった妻を相手に条件を練り直すとなれば、二の足を踏む可能性がある。


