経営・戦略

2026.04.19 15:00

社員46人で営業利益1000億円超、利益率50%のSNS「OnlyFans」はなぜ売却に苦しむのか

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総取引高1.1兆円の異例な事業、Architectは一般向けへの転換を目指す

しかし、OnlyFansは今のところ危機的状況ではない。ラドビンスキーのもとで同社は、ニッチなサイトから巨大プラットフォームへと急成長し、3億7700万人の利用者を抱えている。また、460万人におよぶクリエイターには、セックスワーカーだけでなく、俳優のアマンダ・バインズや歌手のリリー・アレン、UFCファイターのペイジ・ヴァンザントのような著名人も含まれる。フルタイムの社員が46人のOnlyFansのプラットフォーム上の総取引高は、2024年に72億ドル(約1.1兆円)に達していた。英国の法人登記資料によれば、同社はすべてのトランザクションから20%の手数料を徴収している。

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しかし、この取引を精査した投資家はフォーブスに対し、成長の鈍化に加え、サイトと主要クリエイター、規制当局、そして事業を支えるカード会社との関係にリスクがあると感じたと語った。特に、カード会社は、いつでも手を引くことができる立場にある。

銀行免許の取得を目指し、クレジットカードへの依存を改める考え

Architectは、新たなオーナーのもとでOnlyFansを大きく変えると説明していると複数の投資家が述べている。同社は、服を脱がないクリエイターのコンテンツを増やし、Patreonのような一般向けの競合サービスと本格的に競わせる方針だという。関係者によると、Architectは銀行免許の取得も目指しており、OnlyFansが高コストなクレジットカード会社に依存している現状を改めたい考えだ。カード会社は事業に対して無視できないほど大きな影響力を持っており、その依存を減らせれば、成人向けコンテンツのクリエイターは、より安定的に、しかも低コストで報酬を受け取れるようになるという。

提案を受け取ったある投資家は、ArchitectがOnlyFansを「お気に入りのボクサーやアスリートとつながれる」一般向けのプラットフォームに変えようとしていると語った。

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成人向け事業のため、買い手候補の多くが売却交渉から離脱

ウクライナ系米国人起業家のラドビンスキーは、アダルトサイトへ利用者を呼び込むウェブサイトの運営から事業を立ち上げ、OnlyFansの成功によって47億ドル(約7426億円)の資産を築いた。しかし、同社は規模の大きさや高い知名度が足かせとなり、売却は容易ではない。

OnlyFansは、自らを「コンテンツクリエイター向けのプラットフォーム」と位置づけているが、実際にはヌードや露骨な性的表現を含む画像や動画を掲載する場として広く知られている。この点が障害となり、多くのVCやバイアウトファンドは投資に踏み切れずにいる。そうした投資会社は、出資者との間で、たばこ、ギャンブル、武器、ポルノのような物議を醸す分野への投資を禁じる、いわゆる「バイス条項」を設けているためだ。

一方、アダルト業界向けの決済処理のスタートアップを2社創業し、売却した経験を持つPayment Nerdsのショーン・シルバーは、「それはリスクと評判の問題であって、財務の問題ではない」と話す。「取締役会の中に、宗教的な理由で受け入れたくない人がいるかもしれない。単純に、倫理委員会が認めたくないという場合もある。どれだけ利益を生んでいても、それは変わらない」と彼は指摘した。

多くの投資家が引きつけられる理由は、強力な財務内容

それでも、多くの投資家がOnlyFansの案件に引きつけられたのは、同社の財務内容があまりに強力だったからだ。ラドビンスキーは2022年、特別買収目的会社(SPAC)との合併をめぐって協議を進めていた。英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロサンゼルスの投資銀行Forest Road Companyも昨年、OnlyFansの買収提案をまとめようとしていたという。だが、この案件の説明を受けた複数の投資家によれば、同社に関心を示していた他の買い手候補は結局、交渉から離脱した。「この会社をどう扱えばいいのか、みんな必ずしも分かっていないのだと思う」と、匿名を条件に取材に応じたある投資家候補はそう語った。

Architect Capitalの資金調達を、ラドビンスキー自身が融資で支える

そんな中、今年に入り、新たな、しかも意外な買い手候補として浮上したのがArchitect Capitalだった。同社の創業者ジェームズ・セーガンは、2025年のニューヨーク・ポストのインタビューで、自身が「Juulの最大の外部投資家になった」と語っている。電子タバコの先駆けだったJuulは、2022年に米食品医薬品局(FDA)から製品の販売停止を命じられ、経営破綻寸前に追い込まれた。その翌年には、学区側が「子ども向けに製品を売り込んだ」と主張した訴訟で、17億ドル(約2686億円)で和解していた。

ただ、セーガンが運用する5億ドル(約790億円)規模のファンドだけでは、OnlyFansの60%の持ち分を取得する資金を到底まかなえなかった。そこで彼のチームは数カ月にわたり、VC、バイアウトファンド、ファミリーオフィスを回って出資を募った。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは今年、この取引におけるOnlyFansの評価額が、年間利益の7倍強の55億ドル(約8750億円)にとどまっていたと報じた。これは、高収益のサブスクリプション事業としては、驚くほど割安な水準だ。この取引は、セーガンがエクイティで20億ドル(約3160億円)、デットで20億ドル(約3160億円)を調達して買収資金に充てる内容で、3月末までに完了する計画だった。

その後、この取引の条件は魅力的なものになった。Architect Capitalは、ラドビンスキーの死の数週間前、出資を検討している投資家に対し、締め切りを数カ月延期し、当初予定していた借り入れも不要になったと説明した。代わりに、OnlyFans自身が、買い手に資金を貸す形で買収を支えるという。

つまりラドビンスキーは、売却プロセスを加速させるためにセーガンに対して実質的に返済期限の定まらない融資を提供し、その見返りとして、返済が終わるまで年7.5%の利息を受け取るという形だ。

こうした仕組みは、小規模な小売店や配管会社の売却では珍しくない。しかし、モーリスがアドバイザーを務める10億ドル(数千億円)単位の取引で採用されるのは異例だ。通常、企業オーナーは売却時にきれいに手を引ける形を望む。「これは本当に破格の条件だ」と、この案件の説明を受けたある投資家は語る。

OnlyFansはこの取引についてコメントを控えた。Architectも複数回のコメント要請に応じなかった。

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翻訳=上田裕資

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