電通がこの3月に発表した「2025年 日本の広告費」によれば、インターネット広告市場は実に4兆円規模に成長した。2019年にはすでにTVコマーシャルを抜き最大の広告媒体となったし、2025年に初の過半数超え━━ネット広告の対総広告費割合が50.2%を記録した。
しかし同時に、超デジタル化社会におけるネットユーザーのプライバシーの保護も長く課題とされている。伴って、利用者の閲覧履歴や行動データの収集に利用されてきたおなじみ「Cookie(クッキー)」に規制をかける動きも始まって久しい。
言わずもがなだが、クッキー規制とはクッキーを用いたユーザーデータの取得・利用に対する制限だ。
クッキーの利用制限は、欧州GDPR(一般データ保護規則)の「ゼロクッキーロード」、米国CPRA(カリフォルニア州プライバシー権法)の「オプトアウト規制」を始め世界的なうねりとなっている。日本でも2022年4月に「改正個人情報保護法」が、翌2023年6月には「改正電気通信事業法」が施行された。
モバイルでは、Appleの「ATT(App Tracking Transparency)」フレームワークにより、IDFA(広告識別子)の取得にユーザーの明示的な許可(オプトイン)が必要となっている。AndroidでもGoogleが広告IDの利用制限を強化しており、モバイル全体でトラッキングが難しくなっている。
ブラウザ環境でも、GoogleのChromによるサードパーティークッキー廃止計画が長期にわたって業界を揺るがしてきた。最終的にGoogleは廃止方針を撤回し、ユーザーが選択できる仕組みへの移行を示唆しているが、FirefoxやSafariはすでにサードパーティークッキーをデフォルトでブロックしており、ブラウザ環境においてもトラッキングの制限が進んでいる。
そんななか、この「脱クッキー」時代に新しい広告提案を仕掛ける動きがある。JR西日本グループと、デジタルマーケティングなどのコンサルティングを得意とするルグランが組んで開発実装するターゲティング広告「Railcast Ads TM」だ。JR西日本が保有する自社データと、ルグランが扱う「気象データを使った広告配信システム」を組み合わせたデータドリブンな仕掛けであるという。
大阪・関西万博による増収、まちづくりプロジェクトの開業効果などが寄与し、5期連続の増収増益を果たしたJR西日本グループだが、駅やその周辺土地、インフラなどの経営資源を活用して「社会課題の解決を目指す」ことを目的とした共創プログラム「ベルナル」を通じて、新サービスの創出にも力を入れている。
このベルナルを通じて、同グループが今回事業化を決めたのが冒頭の「Railcast Ads」。ここで活用されるのは同グループが保有する鉄道データだ。
JR西日本・専務執行役員デジタルソリューション本部ビジネスデザイン部長の藏原潮氏は、「鉄道は生活接点のプラットフォーム。グループのアセットである鉄道データからは単純な『位置情報』だけでなく、通勤・通学・日常移動といった行動データにもとづく『生活圏』の把握も可能になる」と話す。
そして、鉄道利用データと掛け合わせるのはなんと「気象データ」。このマッチングによって、天気や気温による利用者の気持ちや行動の変化という「生活コンテクスト」を把握し、「適切」なオーディエンスに対して「的確」ななタイミングで、求められる商品やサービスに関する広告の配信が可能となる。
具体的にはたとえば交通系ICカードの利用データから「毎日大阪駅を利用し、コスメをよく購入する20〜50代女性」というオーディエンスを抽出した上で、大阪駅の湿度が低いタイミングで「保湿に優れたスキンケア製品を提案する」といった広告の配信が可能になるというのだ。



