そして2024年、ナイキが1600人のスタッフを解雇すると、「行動規範」と「職場環境」のスコアが急落した。同社はアンバサダー面での優位も失った。RepTrakのアンバサダー・スコアは、ブランドを積極的に推奨する意思のある人の数を測る。ナイキのアンバサダー・スコアの低下は、口コミの弱体化と、中核コミュニティ内での意味あるつながりの喪失を示していた。
アディダスは「We」ブランド、ナイキは「Me」ブランド
ナイキの評判スコアを押し下げ、アディダスを押し上げている最大の要因は、何よりもコミュニティとの結びつきの希薄化である。ハーンはその違いを端的にこう表現する。「アディダスは『We』であり、ナイキは『Me』だ」
彼は続ける。「アディダスは、同じ志を持つ人々のコミュニティの中で、共有された目的意識とミッション感を実現してきた──それがナイキと差別化するマルチプレイヤー戦略だ。ナイキはより自己目的的で、アスリートと勝利、『私』と私の成功に寄っている、とも言える。しかし、アスリートはチームスポーツでプレーするので、その『We』の感覚に変換するのは難しい」
ハーンは、AIが単に購入すべき商品のレコメンドだけでなく、ステークホルダーが企業について意見を形成する手段としてもますます使われるようになるにつれ、「We対Me」の分断がより大きな影響力を持つと見ている。
「AIは意見と判断を携えて場に出てくる。だからナイキに関連する何かを検索すると、過去に人々が何を述べ、何を経験してきたかの影響を受ける」と彼は説明する。「AIに『最もクールなサッカー用スパイクのブランド』を勧めてくれと頼めば、ニュースサイクルの影響を受け、アディダスのようなブランドを好むだろう。人々がアディダスについて良いことを言い、マルチプレイヤーの会話をしているからだ。AIは事実上、意見を持つステークホルダーとなり、他の人々にも影響を与えている」
今後についてハーンは、今年ロサンゼルスで開催されるサッカーワールドカップにおいて、2つのブランドのライバル関係が国際的な注目を集めると予測する。世界最大級の舞台のひとつでナイキとアディダスが相まみえ、両ブランドの事業と評判を左右する賭け金は大きい。
「アディダス対ナイキは、常に目にすることになる」と彼は語る。「そして、もし今日『評判のワールドカップ』があるなら、アディダスがナイキに2対0で勝つだろう。評判管理の面で、より先にポジションを取っているからだ」


