アジア諸国が石炭火力発電に対する規制の緩和に動く
北東アジアの諸国はここ数年、石炭への依存を減らし、よりクリーンに燃焼する天然ガスの輸入へと軸足を移していた。だが今、各国は突如として年間数百万トン規模の石炭が追加で必要となる状況に直面している。1月にトランプ大統領の国家石炭評議会の議長に任命されたグレッチは、「各国は、エネルギー安全保障の問題に直面する中で結局、石炭に戻っている。ほかに選択肢がないからだ」と語る。
実際、日本は石炭火力発電に対する規制の緩和に動いている。台湾も興達(Hsinta)石炭火力発電所の再稼働を予定しており、韓国は大気汚染対策のための上限規制を解除した。また、インドではガスの供給が尽きた際に高負荷運転に対応できるよう、石炭火力発電所に対し、春の定期整備を急いで終えるよう命じている。欧州でも、休止中の発電所を再稼働させる案が検討されている。
カタールが液化天然ガス(LNG)の輸出を通常水準に戻すまでに何年もかかる可能性があると警告する中、トレーダーはこの1カ月で石炭価格を20%押し上げた。オーストラリアの代表的な輸出炭であるニューカッスル炭の価格は、1トン当たり150ドル(約2万円。1ドル=159円換算)に達している。
ホルムズ海峡封鎖の「ドミノ効果」が、内陸のワイオミング炭への国内需要も押し上げか
では、どこまで上がるのか。エネルギー調査会社ウッドマッケンジーで一般炭の調査部門を率いるトニー・ナットソンは、「この紛争が5月以降も続けば、石炭価格が1トン200ドル(約3万円)に達する条件が揃う可能性がある」と話す。その水準でも、石炭はなお割安に見える。世界のLNG価格はこの1カ月で、100万BTU(英国熱量単位)当たり20ドル(約3180円)と、以前の2倍に上昇した。ナットソンによれば、これはニューカッスル炭を1トン当たり460ドル(約7万円)で買っているのと同じことだという。
「当社は、6カ月先や1年先までの出荷分をすべて売り切っているわけではない。手元の貨物の多くは、まだ価格が決まっていない。そのため、価格が上がれば、当社の貨物から得られる収入も増える」とグレッチは語る。また彼は、ホルムズ海峡封鎖の「ドミノ効果」によって、ピーボディが米ワイオミング州の内陸部で採掘する石炭への国内需要も押し上げられると見ている。


