この軌道変更により、カプセルがたどる軌道は当初予定されていたものより角度が深くなり、着水ポイントまでの総距離が短くなる。ただし、アポロの時代からは機体の制御技術が進化していることから、今回のオリオンは米西海岸のサンディエゴ沖約80kmの海域に着水する予定だ。ちなみに、アポロ11号(1969年帰還)の場合はハワイから約1530km、アポロ17号(1972年帰還)では米国領サモアから約650kmの沖合に着水した。
NASAとロッキード・マーティンは、今回のミッションが成功裏に終われば、後続ミッションにおいても同じ耐熱シールドを使用するとしている。ただし、NASAのあらゆる施策をチェックするための内部機関であるNASA監察総監室(OIG)は、アルテミス1でその事象が発生した後、「アルテミス2のクルーに重大なリスクをもたらす可能性がある」と評価。その理由としては、耐熱材(アボコート)が設計どおりに徐々に摩耗しておらず、一部が破片となって剥がれ落ちたこと、さらに「再突入時の複雑な環境を地上で完全に再現することは難しく、根本原因の特定には限界がある」ことを挙げている。
11個のパラシュート

オリオンが大気圏に再突入する状況は、NASAのサイトなどによってライブ配信される予定だ。その終盤ではカプセルから11個のパラシュートが段階的に展開される。以下を参照すれば、それらパラシュートのそれぞれの役割と、各工程におけるカプセルの高度と降下速度を知ることができるだろう。このデータはアルテミス計画の初期に公開されたものだが、基本仕様は当時から変わっていない(数値はすべて目安)。
オリオンのパラシュート展開工程
FBC(フォワード・ベイ・カバー)パラシュート3個(小型)
高度:約8100m、展開時速度:時速520km
後続のパラシュートを引っ張り出し、すぐに切り離される
ドローグ・パラシュート2個(中型)
高度7600m、展開時速度:時速340〜490km
カプセルの姿勢を安定させ、速度を落として切り離される
パイロット・パラシュート3個(小型)
高度2900m、展開時速度:時速210km
次のメイン・パラシュートを引き出す
メイン・パラシュート3個(大型、直径35m)
高度2700m、展開時速度:時速210km
段階的に開き、本格的な減速を開始
こうした工程によってカプセルの降下速度は最終的に時速27〜32kmまで低下し、そのまま着水する予定だ。



