スキップエントリー方式を封印
この方式では、地球の大気圏上層部(高度約120km)に突入したカプセルは、大気によって発生する揚力を利用して、いったん大気圏から飛び出す。これによって減速したカプセルは、再び大気圏に突入してさらに減速する。この方法であればカプセルが受ける熱を分散し、ピークを低減することができ、同時に宇宙飛行士が受けるGも2回の再突入によって分散し、それぞれを4G程度まで低減できる。
また、スキップエントリー方式であれば着水ポイントをより厳密に設定できる。アポロ計画ではカプセルが大気圏に突入してから最大2780kmのスパンで着水したが、その航続距離の短さから、状況によっては理想的な着水ポイントまでカプセルを誘導することができず、その結果、カプセルを回収する艦船を遠隔地まで配備する必要があった。
しかし、スキップエントリー方式であれば、上層大気層から上昇する高度を調整することで航続距離を伸ばすことができ、再突入ポイントから最大8890kmまで航行できる。そのため着水ポイントの候補地点が広がると同時に、どのような軌道からどんなタイミングで帰還しても任意の場所に降ろしやすい。その結果、カプセルと搭乗員を迅速かつ確実に回収できる。

しかし、2022年に実施されたアルテミス1のミッションで、無人のオリオンがスキップエントリー方式で大気圏に再突入した結果、カプセルを保護する耐熱シールドの保護材が剥がれ落ち、大きく損傷するという事象が発生した。製造元であるロッキード・マーティンは、その製造工程を改めるなどして改善したが、今回のミッションに至るまで、その不具合は解決していない。そのためNASAは今回のオリオンの大気圏再突入においては、スキップエントリー方式を使用しないことを2026年2月に公表した。
改善されていない耐熱シールド

では、NASAはどのように耐熱シールドの問題をクリアしようとしているのか? 結論としては、上層大気層でカプセルをスキップさせず、従来の大気圏再突入とほぼ同様に降下させ、カプセルが着水するまでの航行距離を短縮させる。これによって耐熱シールドが熱にさらされる時間を制限し、そのダメージを低減するのだ。こうした調整によってNASAとロッキード・マーティンは、アルテミス1とほぼ同様な耐熱シールドのままで、十分な安全が確保できると考えている。


