1960~70年代に米ソがしのぎを削った初期の宇宙開発競争において、米国が実施した有人宇宙ミッション──「マーキュリー計画」や「ジェミニ計画」、「アポロ計画」では、地球に帰還した乗組員らの乗った宇宙カプセルを回収する任務を、米海軍の空母がたびたび担っていた。空母は安全かつ設備の充実したプラットフォームであり、宇宙飛行士の医療ケアや回収されたカプセルの管理・輸送も可能なため、回収任務にうってつけだったのだ。
しかし、今週末(日本時間11日午前)に歴史的な有人月探査ミッション「アルテミスII」から帰還する宇宙船「オリオン」と搭乗する宇宙飛行士たちの回収に、空母は配備されない。米海軍は代わりに、ドック型揚陸艦「USSジョン・P・マーサ(LPD-26)」が回収に向かうと発表した。
「アルテミスII」ミッションは2026年4月1日(日本時間2日朝)、米フロリダ州ケネディ宇宙センターの39B発射台から打ち上げに成功。米航空宇宙局(NASA)のスペース・ローンチ・システム(SLS)ロケットと宇宙船オリオンは初の有人飛行に旅立った。4人の宇宙飛行士は約10日間の月周回飛行で月の裏側を観測し、すでに地球帰還へ向けて折り返している。
このミッションは人類にとって50年以上ぶりの月軌道への有人飛行でもある。宇宙船オリオンは太平洋に着水する計画で、米海軍はUSSジョン・P・マーサとその乗組員が宇宙船と飛行士らを回収する準備を進めていることを明らかにした。
空母より適任
オリオンの回収に空母が使われないのにはいくつかの要因があるが、最もはっきりしている理由は、米海軍に現在それを任せられる空母が1隻もないためだ。とはいえ、アポロ計画でも強襲揚陸艦が宇宙カプセルの回収を行っている。
米海軍が指摘するように、ジョン・P・マーサは冷戦時代の旧式空母と同等か、それ以上に優れた能力をこの任務において発揮するかもしれない。揚陸艦には「ウェルデッキ、ヘリパッド、艦内医療施設、任務の支援に必要な通信機能など、独自の利点が備わっている」(米海軍)からだ。



