競争力を高め、価格の重要性を下げ、顧客に「また来るよ」と言ってもらいたいなら、次の3つの言葉を企業文化に深く刻み込まなければならない。
体験がすべて
顧客体験(CX)の専門家であるジーニー・ウォルターズが、『Experience is Everything』という書名の本を書いているのは偶然ではない。本書でウォルターズは、意図的な顧客体験の文化を築くために検証済みの戦略と戦術を共有している。最近、Amazing Business Radioのインタビューで、ウォルターズは同書の重要なポイントのいくつかを語った。以下に、私のコメントを添えて紹介する。
カスタマーサービスのミッションを策定する
ウォルターズは「定義しないものは提供できない」と語った。ここで彼女が指していたのは、誰もが「北極星」として使えるカスタマーサービスのミッションステートメントを策定することだ。ウォルターズは、この考え方を「意図性」と呼んでいる。
善意は悪くない。しかし、結果を生むのは意図的なリーダーシップである。優れた顧客体験をつくるうえで、リーダーは目標を明確にしなければならない。リーダーが方向性を示し、期待される行動を定義すれば、チーム全体が同じ方向に向かって動く。そうして生まれる一貫性が、顧客が企業と接するたびに体感するものとなる。
カスタマーサービスのミッションステートメントは、短く、覚えやすく、顧客とどう接するべきかを説明できるものであるべきだ。これがなければ、従業員は何が重要かを自分なりの信念に委ねることになる。育った環境やしつけ、社外のロールモデルから受けた影響が意思決定の指針となる。たとえ良い判断をしていても、カスタマーサービスのミッションと一致しない可能性がある。ウォルターズはこう要約する。「顧客体験へのアプローチを組織が明確に定義していなければ、人は個々の価値観や背景に基づいてその場の判断を迫られ、その結果、体験は一貫しなくなる」
顧客の苦情はコストセンターである
顧客の苦情はすべて、企業にとってコストになる。この問題を彼女が非常に明快に言語化した点が私は気に入っている。苦情は電話一本から始まることもある。つまり従業員が対応に時間を費やし(それは金銭に換算される)、問題処理に追われる。しかし、コストはそれだけではない。電話の時間に加え、事業の種類によっては、注文品の交換、不足部品の発送、修理車両の派遣など、さまざまな費用が発生しうる。苦情を管理するのではなく、苦情そのものをなくすことに注力すべきだ。クライアント向けの研修で、特定の苦情について「どれくらいの頻度で起きるか」と尋ねると、「しょっちゅうです」という答えが返ってきて驚かされることが少なくない。「しょっちゅう起きる」ことは、発生頻度をなくすか減らすために、先回りして管理する必要がある。ウォルターズは、繰り返し発生する苦情が減るほど、事業の収益性が高まると強調する。
問題を知るのにアンケートは要らない
顧客の苦情がもたらすコストの話を受けて、ウォルターズは、繰り返し起きる苦情を抱える一部のクライアントが顧客にアンケートを送ると述べた。なぜか。問題はすでに分かっているからだ。ウォルターズは言う。「ある苦情がいつも起きていると全員が同意しているなら、アンケートを送る必要はない。……だから、直そう」
摩擦を自動化するな
自動化やAI技術は、うまく機能しているうちは素晴らしい。だが、そうでない瞬間もある。技術に過度に依存する企業は、必ずしも顧客にとってより良い、より簡単な体験を実現できているとは限らない。解決策を自動化するつもりが、結果として問題を自動化してしまう。つまり、摩擦を自動化してしまうのだ。そして顧客は摩擦を嫌う。体験を必ずモニタリングし、システムをテストすること。体験のミステリーショッピングを検討すること。利便性を損なう摩擦ではなく、利便性が確実に得られるよう、体験を継続的に磨き込む必要がある。
最後に
善意は出発点にすぎない。結果を生むのは、意図的なリーダーシップの文化である。CXのミッションを明確に定義し、それを中心にチームを整列させ、全員に説明責任を持たせれば、顧客が「感じ、好み、再来時に期待する」一貫した体験が生まれる。これこそが、体験がすべてという考え方の根幹である。



