激しい衝突か破壊的な衝撃か
プシケがどのようにして形成されたかをめぐり、科学者の間で長年論争が続いている。かつてはより大きな惑星状天体だったものから、激しい衝突によって外層が失われ、金属質の核が露出したとする説がある。また、天体衝突を繰り返した結果として金属と岩石が混ざり合って形成されたとする説もある。
「今回の研究では、2種類の主要な内部構造を調べた」と、バイジャルは説明。「1つは、金属の中心核と薄い岩石質のマントルがある層状構造で、激しい衝突によって外層がはぎ取られた場合に形成された可能性が高い。もう1つは金属とケイ酸塩の一様な混合物で、あらゆるものを混合して一体化させる、より破壊的な衝撃によって形成された構造であり、地球上で見つかる、金属を豊富に含む隕石の一部に似ている」と続けた。
今回のシミュレーションでは、この両方のシナリオで、観測と一致するクレーターが形成されることがわかった。これは両者の違いを判断するには、さらなるデータが必要であることを意味する。
だが、今回の研究の最も重要な成果の1つは、プシケの内部にある隙間に関することだ。バイジャルは「今回の主要な研究成果の1つは、空隙率(小惑星の内部にある隙間の割合)がクレーター形成で重要な役割を担っていることだ」として「空隙率はモデルに組み込むのが難しいために無視される場合が多いが、今回のシミュレーションでは、天体衝突の過程と後に残されるクレーターの形状に空隙率が強く影響する可能性があることが明らかになった」と続けた。
「1000京ドルの価値」は忘れよう
今回の研究はプシケに到達した探査機が収集するデータを解釈する助けになると、研究チームは主張している。論文の共同執筆者で、月惑星研究所教授のエリック・アスフォーグは「数年以内に探査機がプシケに到着すれば、探査チームの地球化学者、地質学者とモデル作成者が全員で同じ天体を調査し、そこで得られる情報を解釈しようと試みることになる」と話す。「今回の研究のおかげで、探査チームは好スタートを切ることができる」
プシケが惑星の露出した核であると確認されれば、地球に似た惑星がどのようにして形成されたかに関する科学者の理解を向上させる助けになるかもしれない。だが、プシケを採掘したり地球軌道まで牽引してきたりするのは不可能なので、1000京ドルという理論上の価値が現実化することはない。


