2026.04.24 11:15

人間に歩み寄る技術 フェラーリCEO ベネデット・ヴィーニャ 独占インタビュー

フェラーリのCEOが東京に来た。整備士を目指す若者と話すために、日本のイノベーターたちと夜を過ごすために。半導体業界で26年を過ごした人物には、人と会うことにこだわる理由がある。

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あなたのスマートフォンの中に、ベネデット・ヴィーニャの仕事があるかもしれない。

iPhoneを傾けると画面の向きが変わる。あの動きを可能にしたMEMSモーションセンサーを、かつて彼は開発していた。ゲーム機のコントローラーに革命をもたらした加速度センサー技術も、その延長線上にある仕事だ。そして今、彼はフェラーリのCEOだ。

これはいったい、何を意味するのか。

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テクノロジーの申し子が、情熱と感性の象徴であるブランドを率いている。この組み合わせが面白い。フェラーリの現在地を読み解く鍵が、ここにある気がした。3月10日、東京・三田のイタリア大使館。春の兆しを連れてこの街に降り立ったヴィーニャの来日は、これで150回を超えるという。この日は朝から夜まで、3つの顔で過ごした。本誌独占のインタビュー、将来のフェラーリ整備士を目指す若者たちとの対話、そして日本のイノベーターたちを招いたレセプション。場所も顔ぶれも変わるたびに、語られる言葉の角度は変わった。しかし3つの時間を通じて、変わらないコアは確実に存在した。

「ガクシュウ」そして「カイゼン」

「私には日本に大きな借りがある」。インタビューは、意外な告白から始まった。

前職の半導体企業時代、彼が開発した三次元モーションセンサー技術を、ヨーロッパとアメリカの会社は懐疑的に眺めていた。しかし日本は違った。複数の日本のハイテク企業が、見慣れない技術をオープンに受け入れた。その関係からゲーム機向けのセンサー技術が世に出て、その実績があったからiPhoneにも採用され、そしてその成功があったからフェラーリのボードが彼に声をかけた。「あの日本企業の姿勢がなければ、私はここにいない」。

150回以上の来日経験からヴィーニャが学んだのは、伝統とイノベーションが「両眼のようなもの」だということだ。左目が伝統、右目がイノベーション。片方をつぶったまま運転はできない。その感覚は、フェラーリという会社の経営哲学と重なる。数百年の歴史がある職人文化と最先端技術を同時に磨き続けてきた日本の姿は、フェラーリの鏡像だと彼は言う。

電動化をどう考えるか、の問いには、いつも同じ言葉で答える。「トランジション(移行)ではない。アディション(追加)だ」。

内燃機関、ハイブリッド、電動。この3つの選択肢が並ぶとき、どれを選ぶかを決めるのは顧客自身だ、と。今後の公開を予定している初の純電動車「フェラーリ ルーチェ(Ferrari Luce)」はイタリア語で光を意味する。1947年に12気筒エンジンで産声を上げたフェラーリが、このフェラーリ ルーチェでは4輪それぞれに3つ、計12個搭載したモーターを動力として走る。偶然にしては、できすぎた数字の一致だ。

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interview & text by Tsuzumi Aoyama | photographs by Naoto Hayasaka(Y’s C)

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