2026.04.24 11:15

人間に歩み寄る技術 フェラーリCEO ベネデット・ヴィーニャ 独占インタビュー

ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)や戦略部品の内製にこだわる一方で、オープンイノベーションも積極的に活用。「何をフェラーリのなかに残し、何を外に出すか、その判断基準は」と聞いた。

advertisement

答えは二軸だった。まず、その技術がどれだけ長く生き続けるか。そして、競合との差別化のためにどれだけ自社でコントロールする必要があるか。

エンジン、バッテリー、アクスルは内製。これらはマラネロの「eビルディング」で電動でも、ハイブリッドでも、内燃でもつくれる設計にしてある。昨年9月にマラネロを訪れたとき、工場内にはまだ広大なフリースペースが残っていた事実がヴィーニャの言葉を裏付ける。将来、顧客が何を選ぶか、誰にも断言できないからだ。

外部パートナーに求めるのは、長期的に働く意志と、ユニークな製品を可能にするユニークな技術。「日本は、そういうパートナーを見つけられる場所だ」と言い、こう続けた。「学びがあるからこそ、改善が生まれる。私はそう考えています」。

advertisement
フェラーリCEO ベネデッド・ヴィーニャ
フェラーリCEO ベネデット・ヴィーニャ

新しい価値観の提示

フェラーリ初のフルEV「フェラーリ ルーチェ」のコックピット。ステアリングコラムに固定された計器盤はハンドルと連動して、Samsung製OLEDディスプレイ2枚が重なり合う構造で奥行きを生む。速度計にはあえてアナログ針を残した。
フェラーリ初のフルEV「フェラーリ ルーチェ」のコックピット。ステアリングコラムに固定された計器盤はハンドルと連動して、Samsung製OLEDディスプレイ2枚が重なり合う構造で奥行きを生む。速度計にはあえてアナログ針を残した。

重要な概念として、ヴィーニャは「フィジタル(Phygital)」について語る。タッチスクリーンだけに頼るのをやめ、物理ボタンとデジタル表示を意図的に組み合わせることで、人間の感覚(=フィジカル)とテクノロジー(=デジタル)を正しく接続しようとする設計哲学だ。

タッチスクリーンは「見なければ」使えない。物理ボタンは「触覚だけ」で操作できる。運転中、画面を見ずにボタンを押せることは、そのまま安全性に直結する。

加速度センサーをゲーム機のコントローラーに載せたとき、操作がシンプルになり、10代の少年だけのものだったゲームが中高年の男女へと広がった。技術は人間に歩み寄ってはじめて、より広く届く。

フェラーリ ルーチェではタッチスクリーンを最小限に抑え、物理ボタンを増やした。そのHMIを担当するのが、アップルのデザインを長年率いたジョナサン・アイブが独立後に設立したスタジオ「LoveFrom」だというから、この方向性は確信をもって選ばれたと見ていい。

「脳は、思っているほど高速ではない」

ヴィーニャはそう言って、少し笑った。人間の動作を長年センサーで計測してきた男の感性には、デジタルにすべてを任せることへの警戒が染み付いている。一方で、ヴィーニャの手首には、品のいい機械式時計が巻かれていた。電動車を語りながら、腕には機械式の時計。テクノロジーを知り尽くしているから、アナログの価値も正確にとらえられる。どちらかを捨てることなく、両方を意図的に選べる。“フィジタル”の先にある価値観を示唆しているようだった。

オーバーヘッド・コントロールにも物理スイッチを多用。
オーバーヘッド・コントロールにも物理スイッチを多用。
ゴリラガラスとアルミで仕上げたシフター周り。コックピット全体で約40点のゴリラガラスパーツを使用。
ゴリラガラスとアルミで仕上げたシフター周り。コックピット全体で約40点のゴリラガラスパーツを使用。
左から、ベネデット・ヴィーニャ(フェラーリ CEO)、ジョン・エルカン(同エグゼクティブ・チェアマン)、フラビオ・マンツォーニ(同チーフ・デザイン・オフィサー)、そして、ジョナサン・アイブ、マーク・ニューソン(共にLoveFrom共同創設者)
左から、ベネデット・ヴィーニャ(フェラーリ CEO)、ジョン・エルカン(同エグゼクティブ・チェアマン)、フラビオ・マンツォーニ(同チーフ・デザイン・オフィサー)、そして、ジョナサン・アイブ、マーク・ニューソン(共にLoveFrom共同創設者)
次ページ > 整備士を目指す若者に語りかける

interview & text by Tsuzumi Aoyama | photographs by Naoto Hayasaka(Y’s C)

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事