2026.04.10 09:00

欧州の新国境管理制度「EES」が始動 渡航前に知っておくべきこと

Henhen - stock.adobe.com

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欧州連合(EU)の新たな国境管理制度「出入域システム(EES)」が、10日から本格稼働する。EESとその姉妹制度である「欧州渡航情報認証制度(ETIAS)」は2020年に導入される予定だったが、さまざまな理由で延期されてきた。近々欧州への渡航を計画している読者に向けて、新制度について解説しよう。

10日に本格運用が開始されるEESとは何か

EESとは、渡航者が生体認証情報を用いてシェンゲン圏の国に入国するための制度だ。シェンゲン圏には、EU加盟27カ国のうち25カ国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの4カ国が含まれる。EESの対象となるのは、日本を含む非EU加盟国からの渡航者だ。対象国の渡航者が電子ゲートを通過する際に指紋と顔認証が行われ、パスポート(旅券)への押印は省略される。

EU加盟国とシェンゲン協定加盟国の国民と家族のほか、これらの国の身分証明書の所持者は同制度の対象外となる。航空機や軍の関係者に加え、アンドラ、サンマリノ、モナコ、バチカンの国民も同様に免除される。キプロスとアイルランドはEESの対象外となるため、これらの国境では引き続きパスポートにスタンプが押される。

EESは当初20年の導入が予定されていたが、技術的な問題により23年に延期された。その後、フランス政府は、24年夏季五輪に向けて欧州への渡航者が急増することから、導入を再度延期するよう提案した。新制度に不具合が生じれば、旅行者の往来に深刻な支障を来す恐れがあったためだ。

昨年10月にEUの一部地域で段階的な導入が開始されて以降、EESを通した国境通過回数は4500万回を記録している。今回の本格稼働に当たり、多少の混乱や遅延が生じる可能性がある。近いうちに欧州へ渡航する場合は、少し余裕を持って予定を組むと良いだろう。

対象国の渡航者は、出発の72時間前までに生体認証データ(パスポート情報と顔写真)を事前登録することで、国境での手続き時間を短縮することができる。EESへの登録が義務付けられているEU域外からの渡航者向けアプリ「トラベル・トゥー・ヨーロッパ」は国境審査に代わるものではないが、入国条件に関する質問票を事前に記入することができるため、国境審査の迅速化につながる。

今年末に運用開始が予定されているETIASとは何か

欧州のETIASは、米国の「電子渡航認証制度(ESTA)」や英国の「電子渡航認証(ETA)」と同様の仕組みで機能する。ビザ(査証)が不要なパスポートで渡航する人は、EUへの入域前に少額の手数料を支払って登録することが義務付けられる。入域許可の有効期間は3年間で、その後は再申請が必要となる。

ETIASとEESは当初、同時に導入される予定だったが、渡航者の負担を軽減するため、順次導入されることになった。この2つの制度を組み合わせることで、出入国管理を厳格に行えるようになり、例えば、EU域内で180日間のうち90日を超える滞在をした者を特定することが容易になる。

欧州委員会のイルバ・ヨハンソン内務担当委員(当時)は24年、「EESの導入により、生体認証や写真、指紋が活用されることで、犯罪者やテロリスト、スパイが偽造パスポートを使用することが困難になるだろう」と述べた。欧州委員会の移民・内務総局によると、昨年10月以降、2万4000人が欧州諸国への入国を拒否されており、うち600人は安全保障上の脅威と見なされた。新制度の導入により、これらの人が他の欧州諸国への入国を試みた場合、国境当局は容易に特定することができるようになる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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