主力事業6割減、それでも生き残れた理由
状況が一変したのはコロナウイルス感染拡大時。飲食店は時短や休業が要請され、主力事業であるレンタルおしぼり事業のダメージを受けていた。「当社は6割減まで落ち込みましたが、同業者のなかには8割、9割減となったところも多かった」。しかし「AROMA Premium」の注文が補い、これまであまり売上に貢献していなかったVBとともに、ようやく日の目を見た。
藤波の「わらしべ長者」は、海外進出でも発揮された。「16年に米国に法人をつくった際は、日本のビジネスもまだまだというなかでつくりました」。ただ、そのタイミングで出たため、米国でビジネスを行ううえで重要なFDA(アメリカ食品医薬品局)の肌に触れるおしぼりが化粧品と同じ基準でつくらなければならないレギュレーションを知り、米国の物流や商流を知れたことも大きかった。結果的に、ビジネスが本格始動する前にコロナの影響で米国の事業は中断し、その間に「AROMA Premium」などの人気商品をFDAの化粧品基準のものに変えた。「日本の食材輸出を行う東京共同貿易さんと24年から組み米国へ再進出しました。ベトナムではタオル開発や今後は使い切りおしぼりの生産工場を、香港にも現地法人を構えています」。
現在、米国をはじめ、日本食レストランが急増していることを背景に、引き合いも増えており、品質を武器におしぼり文化を世界に広めようとしている。
そして藤波の戦略は、藤波自身をも思わぬ方向へと導いた。コロナ禍でVBの問い合わせが多く、VBに関する論文を読みあさっていたら、その奥深さに興味が募り21年から横浜薬科大学大学院の修士課程、博士課程と足かけ5年学び、博士号を取得した。FSXの本社にあるラボでVBの研究は続けられており、新たに皮膚に対する抗老化作用を発見するなど、可能性を広げている。キーワードは「観光」と「地方」、そして地方にある名産の「植物の成分」。これをVBやおしぼりとうまく融合させて新たなビジネスをつくっていくという。それが、いつ花開くのかはわからないが、藤波の嗅覚が何かを感じ取っているのは間違いない。
藤波克之◎FSX代表取締役社長兼最高経営責任者。法政大学社会学部卒業後、NTTグループを経て、2004年に前身となる藤波タオルサービスへ入社。13年より現職。特許技術「VB」を軸に、おしぼりを起点とした衛生の再定義と、様々な領域でブランド価値創出に取り組む。横浜薬科大学大学院修了、同博士課程在籍。


