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2026.04.22 15:30

「わらしべ長者」型イノベーション!世界をクリーンにするおしぼり進化形

藤波克之|FSX

藤波克之|FSX

細胞を傷つけずにウイルスを不活化させる──。抗ウイルス特許技術「VB」を事業化したおしぼり会社。わらしべ長者の経営術で海外進出するなど新たな事業領域へと歩みを進めている。


2020年2月、「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルスによる集団感染が確認された同日、あるニュース番組で抗ウイルス、抗菌作用を有する特許技術VB(ブイビー=ウイルスブロック)の特集が組まれた。特許をもっていたのは、13年に東京工業大学(現・東京科学大学)と慶應義塾大学発の合同ベンチャーとの共同研究で取得した東京都国立市にある「おしぼり」の会社藤波タオルサービス(現・FSX)。

VB水溶液をしみこませたおしぼりがウイルスや菌を99.99%以上抑制できると番組で紹介されると、当時、逼迫した医療現場や技術に目を付けた大企業などから問い合わせが殺到。加えて、規模のさほど大きくないおしぼりの会社がなぜ、高度な特許技術をもっているのかと注目された。

「未来を予測したバックキャストではなく、わらしべ長者のように人との出会いから活路を見出していくんですよ」と代表取締役社長の藤波克之は語る。FSXのユニークな事業領域は抗ウイルスや海外進出など、藤波自身が兆しをとらえ、周囲を巻き込みながら拓いていく。

付加価値を生む嗅覚

抗ウイルスへの関心は、コロナパンデミックのはるか前09年、関西を中心に日本でもインフルエンザが大流行した際、米国の航空会社からの問い合わせがきっかけだった。当時、ウイルス対策の商品もなく、藤波自身も知識のない状態だったが、衛生技術はおしぼりの本質だったこともあり、情報を集めだした。すると、「アンテナが高くなっていたのかもしれません。知人が、慶應義塾大学の医学部の団克昭博士に会いませんかという話をもってきてくれたのです」。

団博士が研究する「ポリ酸」は、コロナウイルスやエイズウイルスなどに対し、基礎研究において高い効果を確認されたものの、医薬品化に至らなかった技術だったが、試験場に送って数値をみると、雑菌の増殖を1カ月以上抑制するなど驚異的な抗菌効果が判明した。抗ウイルス性についても従来の消毒液と異なり、人の細胞を傷つけずにウイルスを不活化させることがわかったため、博士の協力を得て「VB」と名付け、特許を取得した。

「このVBで院内感染を防げると思いました。感染を防ぐにはアルコール消毒や石鹸による手指衛生しかありませんが、VBを配合したおしぼりであれば手が荒れることなく感染が抑えられます」。藤波の期待は膨らんだが、世間が関心をもつには時間が必要だった。

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文=古賀寛明 写真=アーウィン・ウォン

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