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2026.04.21 15:30

年商20億円の食器「ARAS」 伝統工芸産地で新ブランドが未来を拓く

石川 勤|石川樹脂工業

加えて石川が地域ブランドを守るために力を入れているのが、知的財産権の確保だ。ARASブランド全体で、すでに40件以上の意匠権を取得。技術は模倣され得る一方で、ブランド価値が損なわれれば産地への信頼も失われかねない。石川は、山中という産地の価値を次の時代をつなぐ担い手でありたいと考え、知的財産の保護には最大限の注意を払ってきた。意匠権の取得は、模倣品対策にとどまらず、ブランド力を高め、海外展開における交渉力を強化する要因にもなっている。

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食文化ごと売り、地域に人を呼ぶ

国内では広く知られているARASだが、海外市場の売上比率はまだ数パーセント。しかし、まもなく新工場が竣工し、本格的な海外展開を視野に入れている。その戦略の核となるのが食文化ごと売るという発想だ。海外市場では、なぜ日本で、なぜ山中でつくるのかという背景が問われる。ARASは、器の産地に根づく文化や哲学を現代の価値へとアップデートした商品だ。石川はその背景としてARASの成り立ちと、加賀・山中が器の産地として培ってきた歴史を丁寧に伝えつつ、山中漆器や九谷焼など石川県の伝統工芸も合わせて広めていく。さらには近年、訪日外国人が4000万人を超えるなか、日本独自の食文化への関心も高まっており、石川は、ARASをきっかけに加賀を訪れてもらう産業観光の仕組みづくりや、工芸産地を巡るパッケージツアーの企画を海外の代理店と進めている。

また現在、多言語・多通貨に対応した越境ECを軸にサンフランシスコや香港での展開も進めている。「越境ECだとしても現地に足を運び、文化を肌で感じ、現地の人間のと本気でぶつかり合う。その上で、ARASを心から応援してくれる人と手を組みたい。時間はかかりますが、一歩ずつ進んでいきたい」。その姿勢は一貫している。効率よりも信頼。これが石川の海外戦略だ。


石川勤◎石川樹脂工業専務取締役。石川県加賀市出身。東京大学工学部卒業後、世界最大の消費財メーカーProcter&Gambleに入社し、約10年間勤務。その後、実父の経営する会社で現職に就く。技術経営(MOT)を基点にDX/D2C事業を立ち上げ、中小企業をスタートアップ型企業へ変革。

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文=真下智子 写真=アーウィン・ウォン

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