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2026.04.21 14:30

走行中のEVにワイヤレス給電、豊橋発パワーウェーブの1.5兆円市場への挑戦

種田憲人|パワーウェーブ

種田憲人|パワーウェーブ

マサチューセッツ工科大学の研究成果をもとに実用化が進むワイヤレス給電。その限界を突破し、新たな給電インフラとして期待される豊橋発の新技術がある。


スマートフォンなど小型デバイスで実用化されている「ワイヤレス給電」。ケーブルや配線を使わずに電力を供給するこの技術は、2007年にマサチューセッツ工科大学(MIT)が、コイルを用いて磁界を発生させる「磁界結合方式」での給電に成功したことをきっかけに研究が進んできた。

同方式が主流技術となっているなか、「電界結合方式」によるワイヤレス給電の社会実装を目指しているのがパワーウェーブだ。送電板と受電板の間に生じる電界を介して電力を送るもので、豊橋技術科学大学で波動工学を研究していた大平孝研究室で生まれた技術シーズだ。大きな電力を送ることと、遠くまで届けることが技術的に難しいと考えられてきたが、それを15年以上の研究で突破してきた。同社代表取締役CEOの種田憲人は「産業用途でも通用する10kWの電力を送ることができ、送電板から30cm離れたところへ給電する技術をもっており、さまざまな用途に展開できる汎用性がある」と話す。

磁界結合方式と比較し、優位性は構造のシンプルさにある。例えば道路に適用する場合、磁界結合方式では、多数のコイルが必要で設計や施工が複雑になり、初期投資や保守コストがかさみやすい。一方で、電界結合方式では、板状の電極を伸ばすだけで配置できるため難易度が低い。コイルよりも発熱が起きにくく、対象物のバッテリーの劣化を抑えやすいのも特徴だ。

パワーウェーブがまず実用化の主戦場としているのが、物流倉庫や製造現場だ。無人搬送車(AGV)に受電板を取り付け、走行ルート上に送電板を敷設するだけで給電できるようになる。「充電のためにAGVを停止する必要がなくなり、充電ポートも不要になる。限られた現場スペースを有効活用できるうえ、周回効率が上がり、生産性の向上が期待されている」と種田は話す。26年9月に、AGV向け製品の販売開始を計画。この1月には、9.1億円の資金調達を実施。製品開発に加え、量産体制の構築や品質保証体制の整備に資金を投じていく。

並行して、小型モビリティの実証も進めている。電動キックボードや電動自転車では、人手によるバッテリー交換が運用コストの課題となっている。そこで一部地域にワイヤレス給電ポートを設置し、停車中に充電する仕組みを導入することで、機体の稼働率向上につなげる狙いだ。

60km/hのEV走行中給電に国内初成功

こうした足元の実用化を進める一方で、将来的な応用先として視野に入れている高速道路に向けた試みも始まっている。25年7月には、大成建設が整備したテストコースにおいて、同社と共同で、時速60kmで走行する電気自動車への連続給電に国内で初めて成功した。今後はさらに高速の車両での給電実証を行っていくという。AGV、小型モビリティ、EVワイヤレス給電の世界市場は、27年に事業者売り上げ高ベースで1兆5000億円に達すると見込まれている。

「社会実装には、国や自動車メーカーなど、多くの関係者と足並みをそろえて連携や検証を進めていく必要があります。AGVや小型モビリティで実績と信頼を積み上げていきたい」


種田憲人◎大学卒業後、2012年三井住友銀行に入行。16年にタスキを設立し、自治体や企業、大学機関と連携した地域課題解決に従事。21年にワイヤレス給電技術の社会実装を目指し、パワーウェーブを設立。

文=露原直人 写真=吉澤健太一

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