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2026.04.24 11:00

飲食ビルの新たな収益モデル 共用部を価値化する「D-Scape 神田鍛冶町」の設計思想

空間価値が面積効率から体験へと移る時代。ダイワハウスが開発した飲食ビル「D-Scape神田鍛冶町」は、縦の回遊性という発想で新たな街のかたちを描く。


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今、飲食ビルの空間価値が大きく変わろうとしている。オフィスにおけるABW(Activity Based Working)が座席ではなく行動をデザインし、ライフスタイルホテルが宿泊を超えた交流の場を創出しているように、箱としての空間提供から、利用者の自発的なふるまいを引き出す仕組みへの転換である。ダイワハウスが神田で展開する飲食ビル「D-Scape神田鍛冶町」(以下、D-Scape)もまた、この潮流に対する野心的な挑戦といえる。

本来エレベーターは各フロアをスムーズに移動するための装置だが、こと飲食ビルにおいては、その効率と引き換えに、空中階は扉が開くまで店内の様子を見ることができないブラインド空間となっている。そのため、上層階に位置する店舗は新規客の心理的ハードルを上げ、集客を予約サイトなどに依存せざるをえない状況を招いてきた。「D-Scape」はこの構造的な分断を、独創的なデザイン設計によって解消しようとしている。

「入り組んだ路地に多彩な飲食店が連なる神田の街をイメージし、各階を垂直につなげる構造を取り入れることで、縦の回遊性を生み出しました」

本ビルを設計したキー・オペレーション代表取締役の小山光(以下、小山)はそう解説する。

地上10階、地下1階から成る「D-Scape」は各フロアに店舗が入居する飲食ビルだが、特徴的なのは、すべてのフロアが屋外階段でつながっている点にある。これは訪れるゲストの好奇心を刺激し、上層階へと誘う動線となっている。階段を上るごとに上の階から調理の芳香が漂い、グラスの触れ合う音が耳に届く。ガラス越しに見えるのは食事を楽しむ人々の表情。階段を上り下りする行為そのものが路地裏を散策するような高揚感を生み、従来の移動を豊かな体験へと変える。

「エレベーターも設けていますが、高い場所があれば上ってみたくなるという人の深層心理を生かし、上階への好奇心を引き出す設計にしています。階段を上る途中、ガラス越しに店内の雰囲気や、そこに集う人々の様子が見えることで、『次はあの階に行ってみよう』という発見が生まれるのです」(小山)

この縦の回遊性が全フロアに路面店のような視認性をもたらし、ビル全体をひとつへの活気ある街へと変容させる。また、入店前に店内の様子を確認できる安心感に加え、各階のテラスや階段の隙間から上下のにぎわいが感じられる連続性のある設計は、高層階にいながらも街とのつながりを実感することができる。こうした空間の可視化はどんな看板よりも確かな集客力として機能し、空中階の資産価値を底上げするのである。

エントランスから上へと連続するアプローチ。目的の店舗へ向かう道中を、新たな発見を促す体験として設計。
エントランスから上へと連続するアプローチ。目的の店舗へ向かう道中を、新たな発見を促す体験として設計。

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店舗同士のつながりを育む令和の商店街

ダイワハウスが本プロジェクトに込めた思いは、同社のパーパス「生きる歓びを、未来の景色に。」と深く共鳴している。「生きる」の根幹である食のよろこびを神田の新しい景色として定着させること。これを具現化したのが独自のフロア設計だ。

特筆すべきは、屋外階段やテラスを建物の主役に据えた点にある。通常のビル開発では、収益を生まない外部空間は最小限にとどめるのが通例である。しかし同社はあえて、この余白に価値をもたせる判断をした。狙いは、単なる飲食ビルではなく、店同士が関係性を生み出す場にすること。個々の店が独立して営業するのではなく、建物全体が街の延長のように機能し、人が自然に回遊する。そうした仕組みそのものに投資することで、長期的な資産価値を高めようとしている。

大和ハウス工業ビジネス・ソリューション本部の柏崎淳一(以下、柏崎)は「D-Scape」での挑戦を次のように語る。

「テラスや階段といった余白を設けることで、多様な個性が表現できる仕掛けをつくりました。入居するテナントさまにとって、自店の世界観を表現し、新しいスタイルにも挑戦できる空間になると考えています」(柏崎)

小山はこの建築が、テナントにとっての表現の場であることを強調する。

「私たちは店舗の世界観をより多くの人に伝えるための舞台をつくりました。エレベーターだけでなく階段という動線があり、側面がガラスになっていることで店内の雰囲気が街に伝わる。テラスをどう使うかも、表現のひとつです」(小山)

テラスと屋外階段が交差する設計により上下階の気配が抜け、ビル全体に一体感をもたらす。店舗面積は各約30坪。
テラスと屋外階段が交差する設計により上下階の気配が抜け、ビル全体に一体感をもたらす。店舗面積は各約30坪。

また「D-Scape」の構造は、入居者同士のコミュニケーションも促進する。

「通常の飲食ビルではテナント同士が顔を合わせることは少ないですが、階段を往来できる『D-Scape』ではガラス越しに互いの様子が目に入る。それが良い意味での切磋琢磨につながり、ビル全体に商店街のような空気が生まれることを期待しています」(小山)

オーナーであるダイワハウスも賃貸管理の枠を超え、テナントとともにこの場所の価値を育てていくという。

「情熱をもったテナントさまとともに、この街の新しい景色をつくっていく。どちらが欠けても本プロジェクトの真の価値は成立しません。お互いに良い関係を築きながら神田に根ざした新しい食の場を育てていければと思います」(柏崎)

既存の飲食ビルが抱えるさまざまな課題を解決し、新たな価値を創出する「D-Scape」。同ビルは飲食ビジネスの次世代のモデルケースとなりうるのか。今後の動向にも注視していきたい。

大和ハウス工業
https://www.daiwahouse.co.jp/

※写真はすべて「D-Scape 神田鍛冶町」の完成予想図

Promoted by 大和ハウス工業 | text by Tetsujiro Kawai | edited by Aya Ohtou (CRAING)