欧州

2026.04.09 09:00

ハンガリー議会選挙を見守るEU、ウクライナ、米国 それぞれの思惑

ハンガリーの首都ブダペストで、同国のオルバン・ビクトル首相(左)への支持を表明した米国のJ・D・バンス副大統領。2026年4月7日撮影(Jonathan Ernst-Pool/Getty Images)

ハンガリーの首都ブダペストで、同国のオルバン・ビクトル首相(左)への支持を表明した米国のJ・D・バンス副大統領。2026年4月7日撮影(Jonathan Ernst-Pool/Getty Images)

ハンガリーでは12日、議会選挙が行われる。欧米の世論調査機関や報道機関はこれが重大な出来事になると伝えており、各国が注視している。ハンガリーの議会選挙の結果は、同国と欧州連合(EU)、ウクライナ、そして米国との関係を左右することになるからだ。

advertisement

最新の世論調査によると、オルバン・ビクトル首相率いる右派与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」に対し、マジャル・ペーテル党首率いる新興野党「ティサ(尊重と自由)」が健闘する見通しだ。マジャル党首は選挙運動で国内の課題に焦点を当て、汚職撲滅に向けた改革の必要性を強調してきた。同党首は経済の再建と民主的な制度の強化を約束している。外交政策に関しては、ロシアへのエネルギー依存度の低減を目指すとともに、EUや北大西洋条約機構(NATO)との関係修復を望んでいる。ティサは若年層の有権者を引きつけており、英紙ガーディアンと米AP通信は、ハンガリーの若者はマジャル党首が勝利し、政治の行方を変えることを期待していると伝えた。

世論調査では現在、マジャル党首がリードしているものの、ハンガリーの選挙制度は歴史的に与党に有利な仕組みとなっている。同国の議会選挙では、有権者は2票を投じる。1票は、有権者が居住する選挙区の候補者に対して投じられ、もう1票は政党に対して行われる。ハンガリーの選挙法では、落選した候補者に投じられた票と当選した候補者の未使用票は、政党名簿の得票数に算入される。つまり、各選挙区で候補者が敗北した政党でも、議会で議席を増やすことができるということだ。この選挙制度は、2022年の議会選挙で与党フィデスに特に有利に働いた。米シンクタンク大西洋評議会によると、同党は選挙での得票率が53%だったにもかかわらず、議会では68%の議席を確保した。こうした過去の経緯を踏まえ、フィデスは今回の選挙でも同様の結果になることを期待している。

オルバン首相は再選を目指してあらゆる手を尽くすだろう。国内の改革や国際機関との連携強化を訴えてきた野党ティサとは対照的に、フィデスはナショナリズムを強調してきた。オルバン首相は、EUとNATOがロシアに対して好戦的で、ハンガリーの国益を考慮していないと非難している。ロシアによるウクライナ侵攻を巡っては、ウクライナを支援すべきではないと考えている。さらに、移民問題やウクライナ侵攻がハンガリーに悪影響を及ぼすとし、ティサが選挙に勝利した場合、こうした外的要因によって同国の社会が損なわれると訴えている。同首相は「ハンガリー第一」主義を掲げ、自らを平和の指導者として打ち出そうとしている。

advertisement

ハンガリー議会選挙を巡るEUとウクライナの懸念

EUとウクライナはハンガリーの議会選挙に特に注目している。ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、オルバン首相は対ウクライナ支援に関する議論を先送りしてきた。例えば、同首相は2023年、500億ユーロ(約9兆円)規模のEUの対ウクライナ支援案を阻止した。数カ月にわたる交渉の末、オルバン首相は翌年の冬にようやく支援の凍結を解除したが、その頃にはロシア軍は既にウクライナ南部と東部を占領していた。米紙ワシントン・タイムズは同年、オルバン首相がEUとNATOに対し、ウクライナ軍がロシア領内の目標を攻撃するために西側諸国の武器を使用することについて、ハンガリーは承認しないと伝えたと報じた。最近では、オルバン首相は先月、EUによるウクライナへの900億ユーロ(約17兆円)の融資を阻止した。さらに、同首相はEUに対し、ロシアのエネルギー部門に対する制裁を緩和するよう求めた。

次ページ > 欧州諸国から非難を浴びるオルバン首相

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事