イラン情勢は他国と同様、隣国イラクにも大きな影響を与えている。世界第5位の石油確認埋蔵量を誇るイラクは、国内で必要とされる食料を安定的に供給することも、家庭に電力を供給することも、公務員の給与を全額支払うこともできない。
イラン情勢の悪化によって問題が表面化した面もあるが、その根本的な原因は過去数十年にわたって蓄積されてきたものであり、1980年代にさかのぼる一連の戦争や財政運営の失敗、そして近隣諸国への過度な依存が要因となっている。ホルムズ海峡で現在発生している混乱により、イラクの石油輸出収入は減少している。だが、その差し迫った危機の根底にはより古く、自らが招いた問題が存在する。それは、同国南部の油田の上空に浮かぶ空に、はっきりと見て取れるものだ。
イラクは文字通り、火に包まれている。天然ガスを燃焼させているからだ。
イラクの危機管理の専門家であるアリ・ジャッバー技師は、自国が岐路に立たされていると警鐘を鳴らす。「発電所を稼働させるためのガス輸入だけで、年間60億~80億ドル(約9500億~1兆2700億円)の損失を出している。これはイラクのエネルギー部門の管理体制にとって恥ずべきことだ」
イラク南部の油田では、原油生産の副産物である膨大な量の随伴ガスが燃焼され、大気中に放出され続けている。同国では、こうした随伴ガスが日量約8800万立方メートル生産されているが、その約3分の1に当たる約2800万立方メートルは、単に燃焼されて無駄になっている。
世界銀行によると、イラクはロシア、イランに次いで、世界で3番目に随伴ガスの焼却処分(フレアリング)が多い国に挙げられている。その無駄になっている天然ガスを回収して利用すれば、イラク国内の電力供給に大きく役立つだろう。ところが、イラクはその代わりにイランから天然ガスを輸入している。
さて、ここからが本題だ。1980年9月~88年8月にかけて、イラクとイランは20世紀で最も残忍な戦争の1つを繰り広げた。兵士と民間人を合わせた死傷者数は100万~200万人と推定されている。両国は国境や川、そしてペルシャ湾の覇権を巡って争ったが、いずれの側も勝利できなかった。今日、イラクは発電所の稼働に必要な天然ガスを輸入するために、イランに年間40億~80億ドル(約6300億~1兆2700億円)を支払っている。その一方で、イラクは自国の油田で天然ガスを燃焼させて無駄にしているのだ。



