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2026.04.09 09:30

イラン情勢の悪化で露呈する隣国イラクの厳しい現実

イラクの油田で行われる随伴ガスの焼却処分(フレアリング)。2018年10月15日撮影(Getty Images)

フレアリング問題に取り組み始めたイラク

公平を期すために述べておくと、イラクはフレアリング問題に取り組んでいないわけではない。イラク国営石油会社、英石油大手シェル、三菱商事による合弁企業のバスラ・ガス・カンパニーは、これまですべて燃焼処分されていたイラク最大級の3つの油田から産出される随伴ガスの60%を回収するようになった。仏トタルエナジーズ、米ベーカーヒューズ、米GEベルノバは現在、随伴ガスを電力網へ送るための計画を進めている。イラク政府のガス回収率は、現政権発足時の53%から現在では約67%へと向上した。

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同国のムハンマド・スダニ首相は米CNBCに「イラク史上初めて、この問題を解決するための明確な計画と日々の取り組みが進められており、2028年初頭までに随伴ガスの燃焼をゼロにするという期限が設定されている」と述べた。だが、これまでの経緯には問題がある。当初の目標では、2022年までにフレアリングを終了させることになっていたが、その後25年に延期され、現在は28年とされている。政府の発表とは裏腹に、フレアリング放出量が依然として高い水準にあると指摘する専門家もいる。さらに、一部の石油企業は、随伴ガスを回収するために必要な設備を整備するよりも、政府に環境違反の罰金を支払うほうが安上がりだと判断している。

ジャッバー技師は、10年後のイラクについて2つのシナリオを想定している。楽観的なシナリオでは、フレアリングの目標が達成され、海外の石油輸入国がとどまり、通貨が安定し、非石油収入が増加する。イラクは、環境経済に向けた精製エネルギー製品の輸出国となる。

悲観的なシナリオは、現在の危機が過ぎ去れば、イラクの指導者はこれまでと同じように振る舞い始めるというものだ。イラク政府の歳出は1400億~1600億ドル(約22兆~25兆円)に上る。一方、石油収入は800億~950億ドル(約13兆~15兆円)だ。同国が輸出する石油の8割以上がホルムズ海峡を経由していることも考慮に入れなければならない。

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ジャッバー技師は、会話の終盤で静かに言った。「今まで通りのやり方を続けていれば、この国は2030年まで持ちこたえられないだろう」

これは国外の批評家の言葉ではない。これは、自国の財政事情に精通し、将来を深く案じているイラク人専門家の言葉だ。同国は転換点を迎えている。イラクは最終的には資源を最大限に活用し、緊縮財政を徹底しなければならない。しかし、今必要なのは、経済再建を後押しするための政治的意志と優れた統治、つまり原動力となるものだ。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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