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2026.04.09 09:30

イラン情勢の悪化で露呈する隣国イラクの厳しい現実

イラクの油田で行われる随伴ガスの焼却処分(フレアリング)。2018年10月15日撮影(Getty Images)

近隣諸国に依存するイラクの現状

イラクはどれほどの割合の電力をイランからのガス輸入に頼っているのだろうか? イラク電力省は、イランからのガス輸入が途絶えた場合、自国の電力供給の30%以上が失われると説明しているが、この割合は40%近くだと推定する声もある。夏の気温が日常的に50度を超える同国では、各家庭が毎日の停電を乗り切るために自家用ディーゼル発電機に頼っており、この数字は単なる机上の空論ではない。

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ジャッバー技師はこう語る。「イラクは石油輸出国機構(OPEC)加盟国の中でも第2の産油国であり、輸出国であるにもかかわらず、いまだにイランからのガス輸入と近隣諸国からの電力供給に依存している。どうにもふに落ちない」

イラクが近隣諸国に依存しているのは、ガスだけではない。同国は水供給の大部分も北隣のトルコに頼っている。この地域の文明を何千年にもわたって支えてきたチグリス川とユーフラテス川は、トルコの高地での雪解け水や降雨によって水源を保っている。トルコは上流に大規模なダム網を建設しているが、両国の間で、イラクへの最低限の水供給を保証する法的拘束力のある協定はこれまで一度も結ばれたことがない。

ジャッバー技師によると、上流でのダム建設や河川流量の減少により、イラクは実際に必要とする水量の30~40%しか確保できていない。この水不足は農家に打撃を与えるだけでなく、発電所の冷却水の供給量を減らし、国内の水力発電の可能性を狭め、食料価格を押し上げている。同技師は、「わが国が有する石油などの天然資源は、経済繁栄の源泉となり得る。サービスや商品を輸入するのではなく、わが国が世界に向けて輸出する側になるべきだ」と強調した。

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この問題は、イラクの国境を越えて重要な意味を持つ。現在、イラクの石油輸出を妨げているホルムズ海峡や紅海といった水路は、再生可能エネルギーへの移行に不可欠なレアアース(希土類)や重要部品も運んでいる。電気自動車(EV)のバッテリーや太陽光パネル、風力タービンに使われる原材料は、これらの水路を経由して輸送されている。イラクの危機は、全世界が抱える脆弱(ぜいじゃく)性を予見させる。

イラクの財政圧力は強まっている。政府は過去3年間、毎月90億~110億ドル(約1兆4200億~1兆7400億円)を支出してきた。好況時には、同国は石油輸出だけで月間60億~80億ドル(約9500億~1兆2700億円)の収入を得ていた。だが、ジャッバー技師が示した試算は、厳しい現実を突きつける。約950億ドル(約15兆円)の準備金に対し、毎月の資金不足が30億~50億ドル(約4700億~7900億円)に上るため、この余裕資金は3~6カ月で底を突く可能性がある。

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翻訳・編集=安藤清香

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