経済

2026.04.12 09:15

富裕層が私的解決を選ぶ確率は貧困層の2倍、34カ国の大規模実験で判明

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環境問題や社会問題の解決を考えるとき、層は利己的な解決策に走り、貧困層はみんなの利益になる解決策を考えるという傾向が、34カ国7500人以上が参加した経済実験によって示された。

たとえば気候変動対策には、温室効果ガスの削減に代表される公共財への投資(公共的解決策)と、堤防建設や移住などに投資する私的解決策が併存している。私的解決とは、資源の提供、投資を行った者だけが利益を得るものであり、公共的解決とは、個人の貢献度にかかわらず、全員に利益がもたらされるものだ。

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公共的解決策においては、誰がどれだけ投資するかが不確実なため、豊富な資源を持つ者にとっては、私的解決策は確実で合理的な投資先となる。だがそれは、公共的解決を弱めてしまうことにもなる。はたして、実際はどうなのか。それを検証すべく、文化的価値観や社会的経済条件の違いを超えた、大規模な経済実験が実施された。

実験参加者は4人1組のグループになり、2人は富裕層、2人は貧困層にランダムに振り分けられた。富裕層は最初に多くの資源を持ち、貧困層は手持ちの資源が少ない。そして、私的解決策と公共的解決策のどちらに投資するかを選択するゲームを10ラウンド実行してもらった。最終的に、全員が公共的解決策に投資するのがもっとも効率的になるよう設定されている。

結果として、富裕層が私的解決策を選ぶ確率が、貧困層の倍近くも高く、全体として公共的解決への投資は減少した。そして全世界で、ゲーム終了時には不平等が大幅に拡大した。

また富裕層は、最初から裕福なのか、努力して裕福になったのか(運か努力か)の違いで意思決定に変化があるか確かめるために、グループの富裕層と貧困層を、努力課題の成績に応じて分けた場合の実験も行った。しかし、運と努力の間には有意な差は見られなかった。

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なんとも気が滅入る結果となったわけだが、この実験では「他の人が協力するなら自らも協力する」という傾向も文化を越えて観察されている。そこで、「早期の公共投資」が公共的解決を支える普遍的メカニズムになることがわかった。これは救いだ。

こうした調査は、これまでも限定的に行われてきたが、これは当時イギリスのウォーリック大学大学院の博士課程にいたユージーン・モルトハウス氏が、世界中の研究者を巻き込んでこの大規模実験を実施したもので、非常に稀有であり価値が高い。日本からは大阪大学社会経済研究所の花木伸行教授らによる研究グループが参画している。

今の世界で、強大な富と権力を有する横暴な人間のなんとかファースト的な言動を見れば、さもありなんという感じだが、幸いなことに、対抗手段がないわけではないことがこの実験で示された。希望を持とう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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