経営・戦略

2026.04.11 11:15

宿泊市場6.5兆円で過去最高も、3割が債務超過という現実

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各地の観光地がインバウンドの活況に沸き、主要都市のホテルでは客室単価の高騰が常態化している。旅行者にとっては予約困難な状況が続くなど、宿泊業界はかつてない好景気の中にあるように見える。しかし、その華やかな数字の裏側では、構造的な変化と深刻な経営課題が静かに進行している。

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帝国データバンクの調査によると、2025年度の国内旅館・ホテル市場は、事業者売上高ベースで6.5兆円に達する見通しだ。これは過去最高を更新する規模であり、市場の拡大そのものは堅調といえる。背景には、訪日外国人客の増加に伴う客室稼働率の上昇と、強気な価格設定が浸透したことがある。

しかし、景況感の細部に目を向けると、インバウンドの大きな柱であった中国からの観光客が激減しており、これが宿泊業の景況感を3カ月連続で押し下げる要因となった。天候不順による外出抑制といった一時的な影響を超え、特定の国からの需要に依存するリスクが改めて浮き彫りになっている。

収益の「質」にも懸念が残る。市場全体が拡大し、売上高が最高水準にある一方で、宿泊事業者の約3割が依然として「債務超過」の状態にある事実は見過ごせない。コロナ禍で膨らんだ負債の解消が進んでいない企業が多く、売上の増加が必ずしも財務基盤の健全化に直結していない実態がある。

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こうした状況は、地域別の動向にも顕著に表れている。都道府県別の増収状況を見てみると、「東京都」(54.1%)がトップで、「滋賀県」(47.6%)、「大阪府」(47.2%)、「沖縄県」(45.6%)、「京都府」(44.3%)と続く。大阪・関西万博の恩恵で関西圏や人気観光都市で好調だが、その一方でコスト増の影響を価格転嫁しきれない地域との格差、いわゆる「二極化」が鮮明になりつつある。

今後は、人手不足に伴う人件費の高騰や、光熱費・食材費の上昇がさらに利益を圧迫すると予想される。単に客数を追うだけの経営から、高付加価値化による利益率の向上と、デジタル活用による省人化投資へ舵を切れるかどうかが鍵となるだろう。借入金という負の遺産を抱えながら、いかに攻めの投資を実行できるかの経営判断が求められている。

出典:帝国データバンク「全国『旅館・ホテル市場』動向調査(2025年度見通し)

文=飯島範久

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