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2026.04.20 14:30

日本発スーパーフード・サツマイモの可能性「僕らは食文化を世界に売りに行く」

奈良迫洋介|くしまアオイファーム

奈良迫洋介|くしまアオイファーム

農業を知財戦略で稼げる産業へ──。12期連続増収で急成長を遂げるくしまアオイファームが、日本発のサツマイモをブランド化。独自の食文化を世界に展開する。


「サツマイモだけを食べて、365日過ごしたこともあります。自分の体で、イモさえあれば生きていけることを証明したかったんです」

そう笑って語るのは、宮崎県から世界11カ国に年間1000トンのサツマイモを輸出する農業法人くしまアオイファームの奈良迫洋介だ。かつて商社マンとしてサツマイモの輸出を手がけていたが、その類いまれなるポテンシャルに惚れ込み、農業の世界へ飛び込んだ。奈良迫が見据えるのは、単なる農作物の輸出ではない。日本のサツマイモという食文化のグローバル展開だ。

奈良迫がサツマイモに抱く情熱は並大抵ではない。2019年の1年間、会食を除いて毎日3本、多いときで6本のサツマイモと牛乳だけで生活した。体調や健康診断の結果はまったく問題がなかったという。「サツマイモは、小さい子どもからお年寄りまで、老若男女問わず食べられる。前菜にもメインにも、スイーツにもアルコールにもなれる。抗酸化作用などの機能性ももち、まさにこれさえあれば死なないスーパーフードになる可能性があるのです」と、そのポテンシャルを熱く説明する。

くしまアオイファームのサツマイモは体に良いだけではない。「取扱量は年間1万トン、商品アイテム数は100を超える。品種自体も多いですが、オリジナルのパッケージも我々の売りです」。また同社は、収穫後のサツマイモを温度・湿度が高い状態に一時的に置くことで腐りにくくする「キュアリング」と呼ばれる技術を用い、1年以上もの長期貯蔵を実現した。これなら品質を保ったまま、海外に輸出できる。

13年の設立(創業は1950年)から12期連続で増収を続け、25年7月期の売上高は25億円に上る。短期間で急成長した背景には、旧態依然とした農業界における「圧倒的な営業力」と「顧客視点」がある。かつてサツマイモは、産地ごとに品種が決まっており、スーパーなどのバイヤーは複数の産地と個別に商談する必要があった。そこに、複数品種を取り扱うことでバイヤー側のコストを抑える、言わば「ワンストップサービス」をもち込み、さらに社内デザイナーによるオリジナルパッケージで差別化を図った。

「バイヤーがどこに困っているのかというペインをひたすら聞いて、つぶしていった結果、『サツマイモのことならアオイファームに聞けば大丈夫』と思ってもらえるようになった。農業でそれをやる人が、ほかにいなかったんです」と奈良迫は語る。腐敗などのトラブル時にも即座に代替品を送ったり、レポートを提出したり、アフターサービスも徹底することで、コストコ、トライアルといった大手流通チェーンからも信頼される「オンリーワン」の地位を築いた。

現在の売り上げの主軸は、自社栽培と全国に300軒ある契約農家から仕入れることで確保したサツマイモを販売する「川中」の事業だが、奈良迫は「川中を一生懸命やっても利益率は上がらない」と冷静に分析する。そこで打ち出したのが、研究開発(川上)と小売り(川下)への進出だ。

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文=中居広起 写真=アーウィン・ウォン

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