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2026.04.20 13:30

次世代電池の新常識「GMS」 東北大学発3DCが中国一強に挑む

黒田拓馬|3DC

黒田拓馬|3DC

リチウムイオン電池に少量加えることで、その性能を向上させるというスポンジ状の新素材。国内外の電池メーカーで実証が進み、2026年には量産も始まろうとしている。


スマートフォンや電気自動車に搭載される、リチウムイオン電池。その性能を向上させる新素材「Graphene MesoSponge(R)(グラフェンメソスポンジ=GMS)」を開発するのが、東北大学発スタートアップの3DCだ。

2010年にノーベル物理学賞を受賞したグラフェンという薄いシート状の炭素材料を、独自技術でナノスケールのスポンジ状へと加工。導電助剤(物質に電気を通す性質を与える添加剤)としてリチウムイオン電池に少量加えることで電気の容量が上がり、電池の長寿命化にもつながるという。リチウムイオン電池の導電助剤市場は30年に約6000億円を見込む。

24年2月からGMSの出荷を開始し、日本、中国、韓国の電池メーカーで実証を行う。26年中に出荷開始予定の量産工場建設も進む。

同社を率いる黒田拓馬は、もともとベンチャーキャピタル(VC)で、大学発の技術シーズの事業化支援を担っていた。21年、東北大学材料科学高等研究所教授の西原洋知が発明したGMSと出会い、支援する側から自ら経営者として飛び込んだ。

「ミイラ取りがミイラになった」と笑うが、そこには明確な危機意識があった。

黒田は大手材料メーカー出身で、大企業が新素材開発に踏み出せない構造を熟知していた。既存事業の収益が優先され、新規投資は後回し。一方で、尖った技術も、5年、10年経てばコモディティ化してしまう──。「今やらないと技術が陳腐化する。自分が代表としてやるしかないと考えました」。

当初は全固体電池などでの活用を考えたが、すでに市場が成長しているリチウムイオン電池に狙いを定めた。1991年にソニーが商用化して以来、電極の導電助剤は20年以上、カーボンブラック(CB)系が主流だった。2010年代半ば以降は、カーボンナノチューブ(CNT)など、より高導電の炭素材料が採用され始め、業界全体で新しい選択肢を探す動きが活発化している。そのなかで、「我々のGMSは、CBやCNTと比べ、高い導電性と柔軟性や保液性により、電池容量とサイクル寿命(充放電回数)を3割向上させ、劣化も防げる」と黒田は自信をのぞかせる。まずはスマートフォンやワイヤレスイヤホンなどの小型製品向けに提供を進めていく。

電池製造支援でエコシステム構築

3DCはさらに先を見据え、電池製造支援に乗り出そうとしている。電池の製造過程の情報(製造条件や品質評価など)を管理し、材料選びや製造方法をAIが分析して最適な方法を提案するSaaSだ。

リチウムイオン電池の量産は、中国メーカーのシェアが約7割で、主要材料供給も中国一強だ。依存構造を回避しようと、欧米では新規参入も進むが、量産ノウハウの不足が大きな壁となっている。

黒田は、そこに商機を見出した。メーカーを育成することで、GMSを購入するプレイヤーを増やす。事業を長期的に成立させるエコシステムを構築しようというのだ。「Day1からグローバルの最先端を切り開かないと、材料ビジネスは成立しない」。VC出身者ならではの視座で、東北から世界に挑む。


黒田拓馬◎京都大学大学院の修士課程を修了後、材料メーカーで新規材料の導入・新規設備立ち上げを推進。その後、サムライインキュベートで技術シーズの事業化を支援するなかで出会った西原洋知教授と3DCを共同創業。

文=加藤智朗 写真=吉澤健太一

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