2. 福利厚生制度を経営者個人のリスクにしない
多くの創業者が、売上や競争とは無縁の場所に潜むリスクを見過ごしがちだ。退職金制度を運用することは、経営者自らが受託者責任を負うことを意味する。この責任は決して名目的なものではなく、法的責任を伴い、場合によっては経営者個人にまでリスクが及ぶ可能性がある。
中小企業向けに退職金制度の導入・運用支援を手がけるフィッシャーSMBで、退職金部門のグループ副社長を務めるアレックス・クイーンは、次のように指摘する。「問題が発生した場合、創業者は個人として法的責任を問われ、企業資産にとどまらず、個人資産にまで影響が及ぶ可能性がある」。
事態をさらに複雑にしているのは、制度の運用を支援するプロバイダーの多くが、経営者と同等の受託者責任を負っているわけではない点だ。創業者は自分が保護されていると思い込みがちだが、実際にはその責任の多くが、依然として経営者自身の肩にのしかかっている。
ここで不可欠となるのが、専門家による監督体制だ。外部の有資格の専門家に運用を委ねることで、創業者は主要な受託者責任を移管し、投資先の選定やモニタリングの負担から解放される。これにより、経営者は自ら意思決定を担う立場から、より高い視点でプロセス全体を監督する役割へとシフトできる。
この違いは、単なる事務負担の軽減にとどまらず、創業者の時間とエネルギーの配分を大きく変える。コンプライアンス対応や自らの投資判断に対する不安に煩わされることなく、事業の構築に専念できるようになるのだ。
米労働省はこの分野における法執行の強化を継続的に打ち出しており、法令遵守は任意ではないという姿勢を明確にしている。責任ある事業拡大を目指す創業者にとって、自前で対応する体制からの脱却は単なる選択肢ではなく、不可欠なステップである。


