リーダーシップ

2026.04.07 14:00

「すばやく動いて壊せ」はもう古い──リーダーに必要な意思決定の新ルール

stock.adobe.com

stock.adobe.com

広く引用される「すばやく動いて壊せ(move fast and break things)」という言い回しには、ある種の小気味よさがある。そこには、シリコンバレー草創期の威勢のよさが凝縮されている。慎重さよりスピードが勝り、伝統より破壊的イノベーションが優れ、進歩にはどこか「巻き添え被害」が付き物だという信念だ。

advertisement

このフレーズは、2000年代半ばの爆発的成長期におけるFacebookのものとして最も密接に結び付けられているが、同種の発想のバリエーションは、初期のインターネット経済全体で広く流通していた。かつて、このフレーズは注目を集めただけでなく、ある程度の理屈も通っていた。比較的単純なシステムの中で軽量なデジタル製品をつくっているのであれば、スピードは優位性を生み、失敗はたいてい低コストでやり直しも利いたからだ。

しかし、このフレーズを初めて耳にした時から、私は居心地の悪さを覚えていた。なぜ、いったい誰が、わざわざ物事を壊したいのか?

誤解のないように言えば、現状に挑戦することには確かな価値がある。「創造的破壊」という概念には立派な系譜があり、イノベーションにはしばしば、前提を問い直し、限界を試し、既得権化したシステムを揺さぶることが求められる。競争環境や危機局面では、迅速に動くことが重要になる場合もある。

advertisement

だが「すばやく動いて壊せ」を運営哲学に据えるのは、まったく別の話だ。というのも、私たちが壊すのはコードやプロセスだけではないからだ。信頼を壊す。関係性を壊す。信用を壊す。そしてこれらは、修復がはるかに難しい。

今日の世界、複雑性、相互依存、そして脆弱な制度への信頼によって特徴づけられる世界において、物事を壊すコストははるかに高くなっている。孤立したシステムとして存在する組織はほとんどない。意思決定は、従業員、顧客、パートナー、規制当局、地域社会へと波及する。リーダーは、失策が共有され、増幅され、記憶される環境で意思決定している。そしてAIの新時代において、その影響はますます加速し、増幅している。システムは瞬時にスケールし、意思決定はすばやく伝播し、小さな誤りが、リーダーが対応する時間を確保する前に、システム全体の問題へと発展し得る。この文脈で、判断を欠いたスピードは俊敏性ではない。無謀である。

次ページ > 「ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い」という格言

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事