プリセールス(営業段階から技術的視点でクライアントとコミュニケーションを取る業務)から実施結果の報告まで、各職務内容を細かなタスクに分解し、各要素について環境が整備されているか、確認していった。そして、現時点で整備されていない要素については、整備の可否を現場のマネージャ―に確認した。
その結果、特に脆弱性診断では環境整備の状況が97%に上り、現状でも発達障害がある人が十分に活躍できる環境があることが分かった。一方のペネトレーションテストについては現状、65%しか環境が整備されていなかったが、職務内容の見直しにより、94%まで改善する可能性を確認できた。
発達障害がある人が活躍するための
「環境整備の状況と、職務内容見直し後に想定される割合」
中でも、ペネトレーションテストにおいて、発達障害がある人が担当することを回避した職務内容は、「クライアントとの調整・交渉」や 「突発的な計画変更への対応」「タスクの割込み」などだ。これらは発達障害がある人にとっては、不得意なものとなりやすい。そこで、別の担当者への職務割り当てが可能かをマネージャーと議論し、可能だという回答を得た。加えて、得意・不得意に応じた業務のアサインは、すでに行っているというコメントも寄せられた。(脆弱性診断では、もともとそれらの職務内容は含まれず)
そのため、サイバーセキュリティの脆弱性診断とペネトレーションテスト、少なくともふたつの職種においては、発達障害がある人が活躍するための環境整備の実現可能性はあると考えられる(※)。
※ 同分析は、あくまで発達障害がある人が活躍するための環境整備の可能性について確認したものであり、あらゆる発達障害がある人がサイバーセキュリティの領域で活躍できるかを分析した結果ではありません。
発想を転換せよ、デジタル人材不足への処方箋
これは、サイバーセキュリティ関連の職種に限った話ではない。経済産業省とIPAは2024年7月、DX推進人材に求める役割やスキルを定義した指針の最新版「デジタルスキル標準ver.1.2」を公開。同指針は、企業へのヒアリングや有識者による検討委員会での議論などをもとに策定された。
その中で、例えば「データ分析(データサイエンティスト)」については、数理統計やコンピュータサイエンスが、「ソフトウェアエンジニア」についてはソフトウェア開発といったテクニカルスキルが、それぞれ最重要スキルとして定義している。一方で、リーダーシップやコラボレーション、創造的な問題解決といったパーソナルスキルについては、「役割・定義次第」だとされている。
つまり、デジタル領域の職種においては、発達障害がある人が必要なテクニカルスキルの条件を満たすことができれば、企業側がその人のパーソナルスキルの状態を考慮し、活躍の可能性を探れるということだ。
人口減少が進む日本で、従来の採用基準と業務設計に固執していては、デジタル人材不足は解消しない。それらを、ゼネラリスト前提からスペシャリストの活躍を意識したものへ、組織の文化を同質性重視から多様性重視へ。発想の転換がデジタル人材を引き寄せ、企業が確かな競争力を得る手がかりになるはずだ。


