テクノロジー

2026.04.09 14:15

過集中、細部への注目──「デジタル人材不足の突破口は「発達特性」にあり【隠れた知性を解き放て ♯2】

Antonina Sozonova / Getty Images

コードの海でデータが「光って見える」

発達障害がある人にデジタル人材としての活躍可能性があると考える理由は、その特性を存分に生かせる業務があるからだ。今回は先述したサイバーセキュリティについて、事例を紹介したい。

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サイバーセキュリティは、ランサムウェア攻撃やDDoS攻撃(特定のサイトやサーバーへ同時に大量のデータを送りつけ、サービスを一時停止や遅延させる)といったサイバー攻撃から事業を守る活動だ。サイバー攻撃は頻発しており、被害は時に数十億円単位に及ぶ。KADOKAWAは2025年3月期(通期)の連結決算において、サイバー攻撃影響による減収が83億円と発表した。同年には他にも、アサヒグループホールディングスやアスクルNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)などの大手企業も攻撃の対象となった。

サイバー攻撃は様々なかたちで仕掛けられるが、悪意のあるプログラム(マルウェア)を企業内のITシステムに忍び込ませる手法がある。取引先や社内からのメールを装い、添付ファイルを開かせたり、リンクを開かせたりすることによってマルウェアが企業内のシステムに侵入する。それは巧妙に偽装されており、侵入した場合の解析にはかなり高度なエンジニアリングスキルが求められる。そこで欠かせないのが、「集中力」や「細部に気付く」能力だという。

最近実施したサイバーセキュリティ専門企業へのインタビューは、印象的だった。同社は、サイバー攻撃の解析やセキュリティのコンサルティング事業を展開しており、幅広い顧客と豊富な実績を有する。同社で働くホワイトハッカー(企業を守る側のハッカー)のひとりは、世界有数の腕前を誇る一方で、典型的なADHD(注意欠如・多動症)の特性があるという。

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そのため、日常生活では注意散漫になりがちだそうだが、いざマルウェアの解析となると、類まれなる能力を発揮する。そのホワイトハッカーは「アセンブリ言語」という、エンジニアでも解読が難しいとされるプログラミング言語で書かれた大量のコードの中から、マルウェアの仕込まれた箇所が「光っているように見える」のだという。

これは、ADHDの典型的な特性、「過集中(hyper-focus)」によって現れる状況だと考えられる。過集中は、あるタスクに完全に没頭することで、他のすべてを完全に無視したり、遮断したりしているように見える現象のことだ。2023年にイギリスのロンドン大学バークベック校が発表した985人の発達障害がある雇用者を対象に調査では、80%の人が自身の強みとして「過集中」を挙げ、71%の人が詳細な情報の処理(細部への注目)を挙げている。

出典:以下 より日本総研作成  McDowall, Almuth and Doyle, Nancy and Kiseleva, Meg (2023) Neurodiversity at work: demand,supply and a gap analysis. Birkbeck, University of London, London, UK.   Table2 Strengths reported by neurodivergent people
出典:以下 より日本総研作成 McDowall, Almuth and Doyle, Nancy and Kiseleva, Meg (2023) Neurodiversity at work: demand,supply and a gap analysis. Birkbeck, University of London, London, UK. Table2 Strengths reported by neurodivergent people
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