食&酒

2026.04.12 16:00

ウイスキー界のブラックボックスに挑む異端児:COMPASS BOX CRIMSON CASKS

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は4月号(2月25日発売)より、「コンパスボックス クリムゾンカスク」。「シェリー樽で熟成した原酒がもたらす赤い果実のニュアンスと、複数の原酒を重ねることで甘みだけに寄らない、奥行きのある表情が魅力の1本だ。


「コンパスボックス」とは、2000年にロンドンで誕生した新進のウイスキーブランドだ。大手酒類メーカーでマーケティングに携わっていた創業者は、スコッチウイスキーがもつ奥深さに魅せられると同時に、「なぜ中身が明らかにされないのか」という疑問を抱いていた。原酒の構成や熟成年数、使われている樽の種類がブラックボックス化され、飲み手は想像力をかきたてられるだけ......そんな状況に風穴を開けるために立ち上げられたのが、「コンパスボックス」である。

最大の特徴は、ブレンデッドウイスキーに焦点を絞っていること。シングルモルトが脚光を浴びがちな現代において、「コンパスボックス」はあえてブレンドという技法に立ち返り、複数の原酒を組み合わせることでしか到達できない味わいを追求してきた。彼らのブレンドは、香り、質感、余韻に明確な設計があり、まるで一篇の楽曲や絵画のように、起承転結をもって完成されている。

さらに特筆すべきは、その徹底した透明性だ。「コンパスボックス」は、使用している蒸留所名や原酒の比率、樽の種類までを積極的に公開してきた。例えばこの「クリムゾンカスク」なら、アベラワー村近郊にある蒸留所のファーストフィルオロロソシェリーバットフィニッシュを基調にしながら、ベンリネスのバーボンフィニッシュやグレンマレイのファーストフィルシェリーなど、8種のモルトがブレンドされている。

このウイスキーを評して「シェリー樽で熟成した原酒がもたらす赤い果実のニュアンスと、複数の原酒を重ねることで甘みだけに寄らない、奥行きのある表情が魅力的です」と語るのは「フグレントウキョウ」(東京・富ヶ谷)でバーマネージャーを務める荻原聖司。ここは北欧発のコーヒーカルチャーを日本に伝えた有名カフェだが、夜のバータイムにはスペシャリティコーヒーを使ったカクテルが人気。この日も「クリムゾンカスク」を使い、コーヒーとベリーの果実味が香る「エスプレッソマティーニ・ハイボール」をつくってくれた。

コーヒーの名所「フグレン」で、シングルオリジンのコーヒーがもつ個性をカクテルという“ミックス”の技法で再構築する夜。単一性とブレンド、ノルウェーと英国、昼のカフェと夜のバー......相反する要素が、ここでは不思議と衝突せず、シームレスに溶け合っていく。これぞ2026年の東京という、どこか混沌としたブレンドの魔力に魅せられる。

コンパスボックスクリムゾンカスク

容量|700ml
度数|46.0%
価格|11550円 
問い合わせ|スリーリバーズ 03-3926-3508

今宵の一杯はここで 

FUGLEN TOKYO
昼はコーヒー、夜はカクテルで憩う北欧らしいチルタイム

プライベートではバーボンも愛飲しているという荻原氏。
プライベートではバーボンも愛飲しているという荻原氏。
ノルウェー産ヤギのブラウンチーズをのせたトースト「ブルーノスト&スライスブレッド」1000円。
ノルウェー産ヤギのブラウンチーズをのせたトースト「ブルーノスト&スライスブレッド」1000円。

最近“奥渋”の通称で親しまれている富ヶ谷の住宅街に溶け込むように佇む「フグレントウキョウ」。1963年にノルウェー・オスロで創業された「Fuglen」の海外1号店として2012年に誕生し、昼は果実味のある浅煎りコーヒー、夜はカクテルを中心に、北欧らしい“チル”を楽しめる空間として、国内外を問わず幅広い層から愛される。北欧ヴィンテージ家具が置かれた空間の居心地の良さも出色。

住所|東京都渋谷区富ケ谷 1-16-11 
予約|03-3481-0884
営業|月・火 7:00-23:00、水-日 7:00-翌1:00 
休|不定休

写真=菅野祐二 文・構成=秋山都

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